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元駐日特派員林国本さんの眼  
空母建造をめぐる議論について

 

このところ、国外のメディアで「中国が空母建造に着手か」とかいう記事をときどき目にするようになった。ある外国の新聞などはご丁寧にもそれらしき建物の写真入りでかなり詳しく報道している。私はなが年国際ジャーナリズムの一分野で仕事をしてきたOBなので、日本の新聞はコラム、記事のすべてに目を通している。時には広告までシラミつぶしに見て、必要な新刊書を購入したりしている。しかし、もともと軍事問題とは関係のない、ソフトな分野を担当してきたので、これまでこういう硬質のテーマは、参考データと見なしていただけで、オープンに見解を開陳したことはなかった。また、このテーマはセンシティブなものなので、勝手なことを言って、私を今日まで育ててくれた元上司や先輩の顔にドロを塗っては申し訳ない、ということから、わが家の食卓で「一家言」みたいなものを吐露するだけであった。ところが、さいきんは国内でもいろいろな人が私見を発表しているので、私もなが年あたためてきた私見を披露してみることにした。

まず、主権独立国として一定の国防力をもつことは当然のことであり、空母を建造することも海軍力増強という面で当然到達すべきゴールだと考えている。私は軍事の専門家ではないが、太平洋戦争の海戦、ミッドウェー海戦等についても、知識欲からかなり蔵書を持っている。前世紀30年代、40年代から空母などは別にめずらしいものではなかった。したがって、中国が空母を建造したとしても決してサプライジングな話題ではないはずである。かえって、産業革命に乗り遅れたため、百数十年も屈辱をなめてきた歴史を振り返るならば、遅すぎたといっても過言ではない。

これは鉄鋼生産量が世界屈指の域に達し、30万トン級のマンモスタンカーも建造できる時代に入った中国にとっては、チャレンジングな課題である。有人宇宙飛行にも成功しており、改革開放で経済力も増強している。そろそろ「和諧社会」、「科学的発展観」というコンセプトをベースして、先人がやりとげられなかったビッグプロジェクトにチャレンジしてもよいような気がする。

また、スーパーコンピューターのノウハウは中国に提供するな、無線操縦機を中国に提供するな、という子供じみたことを言い続けている連中がいるこの世の中で、自分でつくって見返してやるべきだとも考えている。そして、中国の自国の事柄なのに、中国の領海近くまで空母を派遣するような時代錯誤もはなはだしいケースもあった。これは中国人にとってはアヘン戦争の砲艦政策を思い起こさせるものであり、悪いことであるが、中国人を教育する効果は大いにあった。外国かぶれの傾向が少しはある中国の一部の若者たちにとっても、いいクスリになったはず。

さいきん、外国の侵略で学校が南西部に疎開した時代を経験した先輩たちと食事をする機会があったが、私たちは外国の侵略でさすらう生活はまぬがれ、ぜいたくはできなくても自分の好きな仕事を何十年も続け、楽しむことができた。庶民の実感として、しかるべき国防力がこれを保証してくれたと考えている。中国が外国にイエスかノーかと言われる時代が再び来ないように、私は庶民として空母の建造に賛同したい。そうすれば、私たちの子供の世代も、孫の世代も、しあわせに暮らせるにちがいない。以上は第一線から退いても、なお、ジャーナリズム「オタク」として楽しみつづけている人間の私見であることを重ねて強調しておきたい。

「チャイナネット」 2010年2月5日

 

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