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元駐日特派員林国本さんの眼  
「せっかちな」日本人も捨てたものではない

 

昨年12月26日の朝日新聞の「天声人語」に、日本人の「時間意識」についての話があったが、私にとっては非常に興味のあるものであった。

というのは、私は数十年間、いろいろなタイプの日本人と一緒に仕事をしてきたが、一部の人たちの話によると、中国人、韓国人、日本人が同じ背広を着ていると、遠くからでは区別できないが、同じオフィスで仕事をしていると、すぐ違いが分かる、というのである。つまり、中国人はおっとりした「大陸的タイプ」であるが、日本人はまじめで、きちょうめんで、時間を厳守し、往々にしてせっかちだなあ、という印象を与える人が多いようだ。韓国人はその中間にあるということになっていた。私も日本語を数十年勉強し、ジャーナリストとして雑学をつづけてきたので、やはりせっかちな人間と見られてきたようだ。おまけに週刊誌という締め切りを重視する職場でメシを食ってきたので、余計それが昂じていたようだ。余談になるが、ある日、私の勤務している系列のあるセクションのトップがとてもせっかちな人なので、ホテルで同じ部屋に宿泊することをはばかる人がほとんどで、とうとう私にその人と同室できないか、という話になり、私はあまり物事にこだわらない、柔構造的人間なので、「結構ですよ」とOKの返事をした。結果的には、私のほうがはるかにせっかちで、私と同室のその人も閉口したらしい。私の自分の「せっかちな」性格はマイナスイメージと見られているのではないかと思っていた時期もあった。

ところが、中国も市場原理を導入する時代に入り、私の「せっかち」もごく普通のことになってしまった。いや、第一線から退いてネットニュースのお手伝いするようになってからはこの「せっかちな」性格はときには「長所」、「セールス・ポイント」になったような気がしている。もちろん、人間の政治面の円熟ということを考えると、コセコセした人間はやはりマイナス・イメージとして見られるかもしれないが、ではなぜ、いい意味での「せっかち」も捨てたものではないと思うにいたったのかというと、市場原理導入期になると、国外からタイムカードシステムも導入され、出勤、退勤時はそれをしないとお目玉をくらいかねなくなった。ある日、私のそばを知り合いの若者が早足で走っていくので、なぜそんなに急ぐのかというと、タイムカードを押すのだ、というのだった。私は特別の処遇で、タイムカードとは無縁だったので、今の若者たちの苦労は知らなかったのだ。

ネット・ニュースという仕事は週刊誌以上に緊張していて、とにかくたえずニュースを更新しなければならないので、そのストレスたるや、私のごとき人間には推し測りがたいものがあるらしい。余談になるが、日刊紙に勤務していた私の知人も、職業人生の三分の一は締め切り原稿を待つために夜勤を続けたということだ。私はバイオリズムということを人一倍気にしている人間なので、自分は日刊紙なんかに就職しなくてよかったと思っている。

この辺で本題に入るが、中国も高速鉄道、高速道路の時代に入り、生活のリズムがますます速くなっている。そういうことで、いわゆる神経症のような症状が出ている人もよく見かけるようになった。しかし、これは避けて通ることのできない道である。もしも、まだ晴耕雨読とか、24節気とかいう陶淵明の時代のようなリズムを保つことに固執していれば、アヘン戦争以後の中国の悲劇の再演になるにきまっている。世界の流れについていくか、いや、できればそれを先取りする以外に中国人が世界で胸を張って生きていく道はないと思う。

そういう意味で、個人にとっては難儀かもしれないが、結局、具体的なコースは違うとはいえ、日本がたどってきた近代化のような道を中国の特色のある形でつきすすむ以外にないであろう。特派員で日本に長期滞在していた頃、日本の新幹線のダイヤ遵守に感心し、また、白い線を引いた位置にぴたりと止まることにも内心大いに感心していた。それが中国でも現実となりつつあるのだ。考えてみても分かることだが、有人宇宙船を遠く宇宙の彼方で正確にドッキングさせるにはすべて厳密、正確に作業をすすめる以外にないのである。そういうことだから、日本人の「まじめさ」「緻密さ」、「時間厳守」は大に学ぶべきものだと思うが、いかがなものだろうか。朝日新聞は、50年近く読み続けているが、「天声人語」は毎日真っ先に読むことにしている。今回の「天人」氏の一文は大いに参考になった。

「チャイナネット」 2010年1月8日

 

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