国と国の間の経済、文化の交流は、時にはイベントとしてはでに、華やかに進められるものもあるが、じわりじわりと進められているものもある。
時々、会合などで発言者が「一村一品」と中国語で言っているのを耳にしてハッとしたことがある。私が特派員として東京に長期駐在していたときに、フォーリン・プレスセンターのアレンジで大分県へ取材に行ったことがあるが、大分県では当時知事の音頭取りのもとで、「一村一品」の取り組みが繰り広げられていた。当時、中国でも農村の建設が進められていたので、参考になるのではないかと関心を持っていた。その後、大分県からも関係者が中国に来て、その経験を紹介していたが、要するにそれぞれ地元の特色のあるものを市場に出荷することで、市場というものを常に念頭において地元の特産品を出荷することは、昔からあったことだが、それをさらに綿密な企画と市場調査を強化して全国展開することに力を入れ、それによって地方経済の発展をさらに牽引するわけであるが、それを「一村一品」というコンセプトでくくるのは、マーケティングの面から見ても、自然発生的に行なわれていた物資の交流をより科学的な計画に組み入れることであり、ある意味ではより主動的に地方の可能性を掘り起こすうえで新たなブレークスルーといえなくもない。
日本の大分県の「一村一品」のやり方は、もと日本の通産省(現経産省)の官僚であった人が知事となって推進したものなので、最初からマーケットを念頭においた試みであったといっても過言ではない。さいきんは、中国では農村の道路建設が着々と進んでおり、各地の村では「一村一品」の取り組みに力を入れるところが増えている。そして、農村経済の発展にもだんだんと寄与するようになっている。こういう交流の成果はじわりじわりと現れてくるものかもしれない。
また、さいきん、新聞で北京の郊外区で「日本の民宿」のような事業を展開していくことになろう、という記事を目にした。もちろん、だいぶ前から、「農家楽」とかいう形の郊外の農家で生活を楽しむことがはやって、私もものはためし、と一度体験してみたことがある。その時から私はこれは日本でいわれている民宿ではないか、と思った。さいきんは北京郊外にいろいろなリゾート地ができ、私もときどき民間団体の理事とかなんとかいう形で、リゾート地へ行って、カントリー・ライフを楽しみながら、会議もこなしてくることを何度も経験してきた。今回、北京の新聞で日本の「民宿」のような形の旅行も企画する、という記事をみて、北京の観光当局もなかなかやるじゃないか、と感心している。というのはこれは非常に大きなマーケットであるからだ。マイカー族がどんどん増え、週休二日の時代に入った今日、金曜日の午後からでも家族連れで一寸出掛け、郊外で新鮮な食べ物を食べ、フィッシングを楽しみ、果物の採集をする短期滞在型の旅行も、ストレスの解消、心身のリフレッシュにプラスとなるにちがいない。知人に中国で屈指の旅行社に勤務している人がいるので、日本のように修学旅行という市場ニーズの「宝の山」を発掘してはどうか、とアドバイスしたこともあるが、大、中、小都市の中、高校生の国内修学旅行の市場は、旅行社にとって、「金のなる木」「打ち出の小槌」となる可能性がある。しかも、青少年の視野を広げることにもなるのではないだろうか。要するに、「民宿」にしても、「一村一品」にしても、国と国の文化・経済の交流によって生まれたビジネスチャンスであり、「一村一品」「民宿」などはまだ準外来語の段階にあるもので、当分辞書には載ることはないと思うが、中国経済もいよいよ、GDPで世界で第二位になろうとしているこの機会を上手に生かして、第三次産業をどんどん発展させてはどうかと考えている。そういう意味で、中国より20年は先を行っている日本は、大いに参考になるキャッチアップの対象といえなくもない。日本に今あるものは、五年後、十年後中国でもはやる可能性があり、中国の国情に適したものを選択的に導入することを考えてみてはと思う。なかには、一年で中国に入ってきているものもあるくらいなのだから……。
「チャイナネット」 2009年12月9日
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