本誌記者 陳姌
デザイナーの白明輝さん(石剛撮影)
三つの丸い穴、縦に赤い細線が一本、氏名とE-mailアドレス、携帯電話番号が印刷された水色の横罫線が数本。白明輝さんの名刺は、ぱっと見ると皺が寄っていて、ルーズリーフノートから無造作に破り取った便箋のようにシンプルでさりげない。この紙のような手触りの「便箋」は白さんのオリジナル・エコ作品「ペーパーウォレット」シリーズ商品の一つで、特殊素材を用いて作られているため、揉んでも引き裂いても破れず水に強いという特徴があり、同時に100%回収リサイクルができる。
26歳になる白明輝さんは河北省唐山市の出身で、中央民族大学の平面設計専攻課程を卒業後、ある雑誌社で平面デザイナーを務めた。2008年春、北京の798芸術区でタイベック(TYVEK)に関する展覧会を見たことで、このエコ素材を使って実用的なデザインを施し、自分のアイディアと作品を人に見てもらいたいと考えた。
子供の頃に父兄や学校の先生から「多動症児童」と見なされたこともある発散的思考で、白明輝さんは折鶴やカエルといった図工の授業でよく取り上げられる定番のアイディアを捨て、発想を転換して最も実用性のある財布に視線を定めた。
「触ると紙のようなのに、破れもしないし水にも強い。この手触りと質感上のコントラストが面白い――財布の図案として新聞紙や地図、字典や宅配便伝票をプリントし、紙製品のように“偽装”しました。さらに、折りたたんだ財布はもう平面ではなく、多階層で立体的にビジュアルを展開でき、デザインの構想が広がりました。いずれにしても最初はただ面白いと思っただけで、販売量についてはまったく考えていませんでした」と、白明輝さんは記者に語った。
図案プリントの幾度にもわたる試作と折りたたむ方法の綿密な研究を経て、初代「ペーパーウォレット」が2008年5月に登場、反応はまずまずだった。デザインがより多元化し作りがよりすぐれた第二世代の商品も2009年初めに打ち出された。白明輝さんは率直に、自分が今注目しているのはもう「ペーパーウォレット」という商品自体ではなく、より質感のあるデザインだと語った。
日常生活における白明輝さんは「オタク」で、映画を見るのが好きだ。彼は自分のことを「エコロジスト」と自称する。ためておいた使用済み電池を回収ステーションに持って行き処理する習慣を子供の頃から今まで続けている。家にはプリンターがなく、紙を使う時には節約をモットーとして裏紙を充分に活用している。「低炭素」なライフスタイルについては、自然体という原則を貫き、「低炭素」のための「低炭素」生活をするようなことはない。
白さんは言う。「コペンハーゲンのCOP15で確かに『低炭素』が話題になりましたが、こういう注目度は時間がたつにつれてだんだん冷めていくものです。私はネット上での個人のCO2排出量を計算するようなコンテンツに注目したことはないですが、ダイエットのカロリー計算のように多少功利心や個人英雄主義のような意味合いがあると思います。環境保護もしくは『低炭素』なライフスタイルには順を追って一歩一歩進めるよう理性的なガイダンスが必要で、一律的にやることはできません。一人ひとりのライフスタイルは尊重されなければならず、あまりにも極端で激しい方法を取るべきではないからです。私のライフスタイルは私のデザイン作品を環境保護の方向へと向かわせています。将来もし子供が生まれたら、小さい頃から節約をするように教えます。どんなことでもあまり複雑に考えてはいけません。ちょうど私のデザイン作品のように、肩の力が抜けたような感じを与える、シンプルライフであるべきです。」
「北京週報日本語版」2010年3月10日
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