本誌記者 徐蓓
コペンハーゲンでの陳冀俍さん。
2009年12月7~19日、コペンハーゲン世界気候変動大会がデンマークの首都コペンハーゲンで行われた。中国の民間気候変動行動ネットワークの気候交渉オブザーバーとして、ドイツのハインリヒ・ベル財団(Heinrich Böll Foundation)環境プロジェクト・オフィサーの陳冀俍さんはこの大会を自ら体験した。会議期間中、陳冀俍さんは自分の見聞や思うところをブログに記録してきた。そこには、「愚公移炭」、「排出量削減はダイエットのようなもの、最大の敵は自分」、「気候問題の解決には人類が貪欲さ、意気地のなさ、尊大さ、見識の浅さに打ち勝つことが必要」といった警句が数多くあった。陳さんのこうした経歴と観点は多くのネットユーザーの注目を集めた。
「愚公移炭」の物語
「愚公移山」の物語は中国では誰もがよく知っている。物語の重点は「移山」にはなく、根気よくやり遂げる精神を強調しているものだ。今日では、「山」はもう人類の発展を阻む障害物ではなくなり、大気中にたまり続ける「炭(CO2)」が人類の頭上につるされたダモクレスの剣となった。陳冀俍さんは愚公を見習って、少しずつ、CO2の排出を減らそうと決意した。陳さんのブログ名もおのずと「愚公移炭」に決まった。
1979年に生まれた陳冀俍さんは中国の最も重要な工業大都市、上海の出身だ。華東師範大学環境科学・技術科を卒業後、ドイツのフライベルク工業大学(TU Freiberg)で環境管理を学んだ。ドイツで修士課程を修了するには、一学期の実習が必要であったため、機会を得てドイツ技術協力公社(GTZ)が浙江省で行った企業環境保護コンサルティング・プロジェクト(EECZ)に参加した。同プロジェクトの主な任務は現地の中小企業に省エネ、排出量削減、グリーン生産の実現等についてのコンサルティングを提供することだった。三年前、陳冀俍さんは北京に移り、相前後して北京環境・科学研究所とドイツのハインリヒ・ベル財団の環境プロジェクトチームで働いた。
ここ数年の職歴について話が及ぶと、陳さんは「自分の消費観はこれによって変わった」と話す。そこらじゅうにあふれる割引販促広告に対しても、陳冀俍さんは比較的理性的な態度を示し、あってもなくてもいい物を衝動的に大量購入しないようできるだけ努めている。陳さんは、将来の「低炭素消費モデル」はサービスの購入がメインになり、主にサービスを享受し、物を100%利用し尽くすことになるはずだ」と考えている。もちろん、これにはメーカーの協力が必要で、たとえばリース期間満了後、メーカーが必ず製品性能について評価し、その結果により引き続き貸すのか回收して廃棄するのかを決めなければならない。もし誰もが実体商品を買うのではなくサービスだけを購入するようになれば、社会全体が「ペーパーレス・オフィス」のようになり、資源の消費と環境に対する汚染を可能な限り減らすことができる。
トレンドの都、上海の出身で、しかもヨーロッパ游学の経歴も持つ陳冀俍さんは、優雅で詩的な雰囲気の生活を送りたいと考えている。「低炭素生活と生活クオリティーの間にはつりあいの取れるポイントが必要だと思う。低炭素のために自分の生活が快適でなくなってはいけないし、そのために健康をないがしろにするのはもっといけない」。陳冀俍さんはちょっと笑って、「道徳的な高みに立って人を非難することには反対だ。」 と言った。
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