林国本
さいきん、メディアで北京のもと郊外県であったところに、「航空機エンジン企業」ができる、ということが報道された。そして定礎式の写真まで掲載されていた。北京に暮らしているわれわれにとってこの30年の変化は非常に大きなもので、恥ずかしい話だが、ときどき聞いたこともない地名を耳にすることもあり、自分たちが大きな変化の中にいることを痛感することしきりである。
一時期、北京の大気の汚染がひどく、北京オリンピック開催前はいろいろ懸念の声を耳にしたが、北京の首都鉄鋼公司は河北省の海辺の島に移転するし、セメント工場、メッキ工場なども次々と姿を消してしまった。おかげで北京の大気の環境もたいへんよくなり、ビルの屋上から遠くの山々が見えるようになったし、日本では「日本晴れ」といわれている「北京晴れ」の日も増えている。
とにかく、エントツからもうもうと黒い煙を吐き出す工場はもうほとんど目につかなくなった。これはまったく正しい措置だと思う。そのうちに、国内総生産で世界第二の経済大国になると日本のメディアで伝えられているが、13億の人口で割り算をすることも忘れてはならないが、市民、国民の生活の質の向上に力を入れることは、今中国でほとんど毎日のようにメディアで語られている科学的発展観の真髄でもあると思う。北京のような国際大都市はどんなコンセプトで再開発、発展させるべきか。これは私のような素人が頭をひねることは不必要。私よりも頭の良いスペシャリストが大勢北京市にいることだから、とっくにグランド・デザインが描き上げられているに違いない。地下鉄、軽便鉄道も次々とつくられているし、東京の銀座にいるのではと勘違いしそうなデラックスなショッピング・モールも次々と開店している。北京はこれからますますよくなっていくに違いない。
しかし、すべてが楽観的な話ばかりではない。だいたい、北京の位置する華北地域は気候の乾燥したところで、水不足も深刻である。そういうことで、中水の利用とか、節水型ライフスタイルの構築とか、いろいろ措置がとられている。省エネの面ではさいきん、政府主管部門の主導のもとで、省エネの電球が格安の値段で各家庭に配布された。住民の省エネ、環境保全意識もかなりの向上が見られるようになった。それでも、まだまだ課題が山積みしている。
航空エンジン、自動車製造、風力発電設備製造、IT産業といった具合に、環境保全にプラスとなる産業への転換が結実しつつある昨今である。そして環境保全についての教育もかなり徹底しており、北京は大きく変わりつつある、というのが実情であろう。
もちろん、なんと言っても発展途上国の中国のこと、すべてが一朝一夕に解決されることは、常識からしても無理である。しかし、着々と、地道に努力していけば、世界で一番住みやすい町になることも夢物語ではないだろう。
「チャイナネット」 2009年8月6日 |