林国本
先般、日本の一橋大学北京事務所と中国の寧夏回族自治区関連部門の共催のセミナーに参加する機会に恵まれ、いろいろと勉強させてもらった。
このセミナーで感じたことを二、三挙げてみたいと思うが、まず、改革、開放の初期いらい、西部地域は、意識の面で遅れているという「偏見」がかなり改められたことである。
おそらく地方のトップたちは、中央のしかるべき学校での学習を経ることにより、かなりレベルアップしており、自治区の行政、経済の面でかなりの進展がみられることだ。また、中国の各省、区には、ハイレベルのシンクタンクが存在し、いろいろと地域の発展についての研究が進められていて、その成果を公表する出版物もあり、とにかく省・市レベルでは大幅な意識の向上がみられることだ。さらに、あまり気がついている人がいないと思うが、テレビとインターネットの果たしている役割が非常に大きい、ということだ。情報化時代とは、地球上のどこにいても世界の動きをキャッチできるということだ。そういうことで、地元のシンクタンクの人たちと話し合っても、北京や上海にいるのとほとんど同じレベルで交流できる。
その次に、西部、西部といって、遅れたところというイメージで物事をみてはならない、ということだ。寧夏というところは回族の人たちが大勢住んでいるので、中近東との経済、貿易の窓口としての役割を上手に生かしていることもかなり新鮮に感じた。
そしてさらに挙げておくべきと思うのは、今回のセミナーのタイミングに合わせて、日本からアジアの産業経済に詳しい関満博教授をお招きして、セミナー開催の前に、寧夏各地に足を運んでもらい、産業経済について視察してもらったことである。筆者はジャーナリストとしての現役の頃から関満博氏の論文に注目し、とくに温州の中小企業についての文章にことのほか興味を覚えた。今回のセミナーでの関氏の発表は圧巻といっても過言ではないものであった。こうしたアレンジをみて私は中国の経済発展を分析する際には、もちろん地元のシンクタンクやトップ層の視点も重要であるが、こうした「他者の眼」で物事を見ることの重要性を痛感したのである。たとえば、かつての「第三線建設」の際に、鋳物業が地元に移転したが、それが著名な工作機械企業の寧夏への進出のきっかけともなっているという指摘はたいへん参考になった。
関満博氏はさいきん、(社)経営労働協会を通して『中国辺境の地域産業発展戦略』という本を上梓されたが、これは寧夏自治区にとっては「他者の眼」として参考にする価値のあるものだと思う。
日本のメディアによると、来年あたりに中国は世界第二の経済大国になる可能性があるらしいが、本当にそうなればありがたいことだが、いつも言われているように中国のことは十三億の人口による割り算も必要ということで、本当の意味で第二の経済大国としての豊かさを味わうには、まだ長い道のりがあるというべきであろう。
それでも、とにかく前進、発展の成果を目にすることは喜ぶに値する。
とにかく、自力で頑張ることも大事だが、このような「他者の眼」による厳しい指摘を参考にする度量、余裕も必要であると思う。
「チャイナネット」 2009年7月29日 |