林国本
オリンピックの開催のために施設、交通インフラの整備に力を入れてきた北京だが、もう一つ大きな課題は大気の質の改善であった。どんよりとしたスモッグのもとでマラソン・レースの展開ということにでもなれば様にならないし、メンツまるつぶれであった。さいわい、努力の甲斐もあって、一応順調にいった、これからはオリンピック以後においても、はたしてそれが保てるかどうかということだ。北京市には自動車メーカーもあるし、国全体がモータリゼーションのさなかにあり、さいきんは国際経済危機の中でも、北京ではクルマがかなり売れており、これは朗報ではあるし、北京市の税収のアップにつながり、GDPの8~9%増を確保することにもつながるわけだが、しかし、大気の質がもとのモクアミになってしまっては、市民にとってもよいことではないし、また、外国のメディアにまた格好のネタを提供することにもなりかねない。外国のメディアには、とにかく中国の欠点を取り上げることが好きな人がかなりいるようで、筆者もよくそれに目を通しているが、筆者としては発展途上国として欠点がない方がおかしいと思っており、かえって、いいことずくめに書いてもらうと、その記者が、「偏向報道」だととがめられるのではないのか、と心配するくらいである。
とはいうものの、筆者は一北京市民としてやはり、青空の日がどんどん増えることを願っている。というのは、オリンピックだけでなく、北京はもはや国際化した大都市へと変貌をとげており、諸外国の大企業のアジア総本部が置かれ、世界的な会議、イベントが催される町となっている。したがって、環境の質いかんは重要な関心事のひとつであり、もうあともどりはできない段階にきていると見た方がよい。そのため、どうしても公共交通システムを主とする都市に変身をとげていくことが不可欠だと思う。
クルマをもつのは便利であることは重々承知しているし、筆者も若ければきっとマイカー族の一人となっているにちがいない。筆者の次の世代も、一家でクルマ2台持っている。だから、マイカー族の人たちと同じ目線でクルマ社会の到来をみているつもりでいる。しかしながら、中国の国際的地位の向上と北京の国際化近代都市への変貌ということを考えると、みんなで不便を我慢して、だんだんと環境にやさしい公共交通システムへとシフトしていく必要があると考えている。
したがって、奇数、偶数制とか「都心部」への乗り入れ規制とか、打開策を考える必要がある。クルマがさらに増えつづけると、オリンピック以前に逆もどりすることは目に見えている。その時になってあわてるよりも、今のうちに打開策を練っておく方がよいのである。
やがて、地下鉄や軽軌鉄道が10数本できる時代が来るのだ。今よりも経済発展レベルの高い時代が来るのだ。中国よりも経済発展レベルの高い国の中には、自転車通勤を実行しているところもある。これは人類にとって共通の課題となっているのだ。「ころばぬ先の杖」ということわざがある。近未来の変化を先取りして、今からでもよいからこのテーマにについて議論しておいた方がよいような気がするがいかがなものだろうか。
「北京週報日本語版」2009年2月17日 |