経済成長への影響

国家統計局の資料によると、PPIの上昇を促した主な原因は、石油、石炭などのエネルギー価格と原材料価格の大幅な上昇だ。一貫して低コスト競争に頼ってきた製造業にこの上昇が危機をもたらした。

任興洲所長は「PPIの上昇とCPIの下降は、工業界での原材料コストと労働力コストの上昇が川下製品にスムーズに転移できていないことを物語っている。工業企業、とりわけ加工企業のコスト上昇は転嫁するすべがなく、このことが工業企業の生産能力の発揮を抑制することになるだろう」と予測する。

これと同時に、今年上半期の都市部住民１世帯当たりの可処分所得の伸び率が07年の12.2％から6.3％へと下がった。消費者の経済動向に対する期待や耐久消費財の購入願望がいずれも昨年より大幅に低下した。このことは企業の売上の伸びを緩め、業績予測を下げることになるだろう。

「このことは、持続的で安定してスピーディーに経済を発展させるという目標にも大きな圧力をもたらす」と任所長は言う。

中原証券のマクロ経済アナリストの何衛江氏は「8月のCPIとPPIの逆ザヤ現象の激化は企業の利益をさらに下げることになるだろう。PPIは生産過程を反映し、CPIは販売過程を反映する。生産コストが上昇し続ける中、販売価格がやや下がっている状況のもとでは、企業の利益は圧縮され続け、企業の投資に対する積極性も低下し、プロジェクトの着工率と工業生産の伸びに下降現象が現れ、経済成長はさらに緩慢になるだろう」と指摘する。

国家統計局のデータでは、PPIの上昇に伴って、工業増加値の伸びが下降している。8月の工業増加値は前年同期比12.8％増となったが、この伸び率は02年8月以来6年ぶりの低さだ。

CPI上昇の可能性は？

人々が心配しているのは、PPIの上昇傾向が、下降しているCPIへの上昇圧力になるのではないかという懸念だ。

国家統計局のデータでは、8月のPPIのうち、生産財の工場出荷価格が前年同期比12％増となったことが明らかになった。これは、製造企業の生産コストが次の段階で上昇圧力に直面していることを物語っている。8月の消費財の工場出荷価格は前年同期比４％増となったが、このことは食品、衣料品、日用品などの消費価格が今後も上昇する可能性があることを物語っている。

任所長は、PPIの増大傾向はいくつかの道筋でCPIに影響する可能性があるとして、その道筋について次の点を挙げた。▽石炭、石油、電力などの価格が農業生産財に反映され、さらに穀物や農産物に反映され、食品価格に反映されたあとCPIに影響する。▽PPIのうち石炭、ガスなど採掘業製品の価格が水道･光熱費などの価格に反映され、CPIに影響する。▽PPIのうち原材料価格の上昇が工業消費財のコスト上昇につながり、その価格に反映してCPIに影響する。

しかし、任所長は同時に次のようにも指摘する。「今の状況では、すべてのPPIがCPIに影響するわけではなく、そこに至るまでには多くのプロセスがある。そしてかなりな部分はこのプロセスの中で消化されていくだろう。たとえば、水道・光熱費などの価格は目下主に政府がコントロールしており、政府が価格調整のリズムをコントロールすることによってその上げ幅を制御できる。工業消費財のコストが上昇しても市場への供給は十分であり、企業が価格を上げるのは難しく、自分で消化するしかなく、最終的にそのうちの一部だけがCPIに反映されることになる」。