焼き網がないのはなぜなのだろうか
中華料理の方法はいろいろある。油で炒めたり、煮るにしても、強火で短時間にやるか、ゆっくりと弱火でやるかによって言葉も違う。日本語では「遠火の強火」とか「中火の弱火」「弱火の中火」など紛らわしい。中国語は「shao 烧」(直火で焼く)、「kao 烤」(反射熱で焼く)、「jian 煎」(少量の油で焼く)、「zha 炸」(たっぷりの油で揚げる)、「bao 爆」(高温の油で瞬時に揚げる)など料理法が一字で分かる。
中国の友人らにも好評の焼き鳥
しかし、網で焼くという方法がないのはなぜなのか。焼き鳥を焼いて中国人の知人を招待した。うまい、うまいと好評だった。鳥肉を適当な大きさに切って、塩と胡椒を降りかけて焼いただけの単純な料理である。鳥肉の切り方、串に刺す方法などにも工夫がいる。網に置いたときに鳥肉の串が勝手にぐるぐる回らないように平均した肉の大きさと厚さ、それに肉の中央に刺さるようにするのが意外に難しい。塩は一尺ほど上から振り掛ける“尺塩”で、平均に塩がかかるように振るのも味を引き出すコツの一つである。
この鶏肉を焼く網がない。上海の大きな店には切り餅を焼く網があったので、購入した。ガスレンジの両脇にレンガを置いて「遠火の強火」で焼いてみた。しかし、鶏肉の油がレンジの上に垂れてしまい、汚れと煙でさんざんだった。
日本に一時帰国した際、新宿のデパートで焼き鳥や串焼きができるゴトク付きの網を買ってきた。焼き網はこのほか、「魚の焼け汁が焦げつかず、煙がでない」というものもあり、別に帰国したときに購入してきた。
海の魚がほとんどなかった南京市内で最近、秋刀魚や鮭が売られるようになった。焼き鳥を作ったり、秋刀魚の塩焼きを大根おろしで食べたり、鮭のバター焼きなど日本の味を楽しんでいる。
南京で生活を始めた7年前に比べたら、野菜や魚の食材も驚くほど豊富になった。北京オリンピック後の食文化の変化が、南京までやってくるのはまだ数年先のことだろうが、いっぱいある“食の不思議”は、そのころにはさらに増えているのだろうか。それともナゾは解明されているのだろうか。
(写真はいずれも筆者撮影)
「北京週報日本語版」 2008年10月29日 |