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元駐日特派員林国本さんの眼  
自信の表われか、逆張りか、それとも?

                       林 国本

アメリカの金融不安がつづく中で、中国の招商銀行と工商銀行の支店がニューヨークで開店した。かなりの金融大手がヒヤ、ヒヤ、ハラハラ、ドキドキしているこの非常時にニューヨークのど真中に開店するとは、大した度胸だし、なにか深い読みでもあるのか、と思いたいが、じっくり考えてみると、手続、審査とかの期間を考えると、これはだいぶ前からスケジュールとして決まっていたことと考える方が正解かもしれない。

しかし、この時期にニューヨークに乗り込んでいくことは、中国の銀行職員にとっては、たいへんいいトレーニングの機会となると思う。

アメリカの金融業が先行き不安の中でもがいているのをじかに見て取り、また、その不安から抜け出す過程をも実感することは将来の中国の金融業を背負って立つ若者たちにとってはまたとない勉強の機会でもある。

中国はこの30年の改革開放で大きな成果を収め、かなりの自信をもつようになっており、次の30年もスムーズにいけば控え目にみても中程度の発達国になれるのではないかと言われている。もちろん、その間には農業、環境、省エネといったいろいろな課題を乗り越えていかなければならないが、科学的発展観を確立して取り組んでいけば、目標は達成できるにちがいない。

「中国経済のファンダメンタルズは基本的には良好である」という言葉をよく耳にし、目にする昨今であるが、アジア経済危機をほとんど無傷で乗り越えた中国も、それ以後は経済のグローバリゼーションとのかかわりも増大し、今回の金融不安の津波も、すこしは影響を受けているのではないかと思われる。金融機構のバランスシートは、外部のものにとってはトップ・シークレットで、勝手な臆測は厳に控えるべきであるが、マイナーな新聞でチラッチラッと目にするエコノミスト諸氏の論評を見ると、少しは津波の影響があるらしいが、これらのエコノミスト諸氏も、銀行のバランスシートに直接触れることのできる立場にはない人たちであることを筆者もよく知っているので、その高説も臆測と分析の域を出るものではない。金融機関の財務諸表は常識では、その会社のトップを含めて二、三人しか触れることができないものである。あまり範囲を広げると、いったんその一角でも外部に漏れると株価の変動が起こり、その会社にとって死活の問題ともなりかねない。したがって、そういうトップシークレットに触れる機会が皆無の社外の人間のコメントは、臆測とかまた聞きと見た方がいいのではないか。ただひとつはっきり言えるのは、中国の対外貿易も、今回の金融大波動を逆手に取って、本当の意味で全方位的に切り変えていくべきである。そしてブランド力の育成、高付加価値製品の開発に注力すべき時期に入ったということである。

招商銀行、工商銀行のニューヨーク支店の主業務は、貿易業務の決済とか通常のものだ、とメディアで報じられている。つまり、中国はいくら中味の変化があっても、中米貿易はこれからも発展すると読んでいることを示す。衣服とか、玩具とかは付加価値も非常に低い。したがぅて、雇用問題さえ上手に解決すれば、貿易構造を微調整すれば、中米貿易はこれからも発展することは疑いない。自信と将来への読み、二つの銀行のニューヨーク支店開店の意味はそこにある。証券投資を目的とはしていないので、今の段階では逆張りとは言えない。招商銀行関係者のオープンセレモニーでのあいさつは、ジョークやユーモアに富むもので、これは自信の表われと見ることができる。

「北京週報日本語版」2008年10月24日

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