寧東エネルギー・化学工業基地
2003年に始動し、現在も建設中のプロジェクトで、寧東炭田に依拠する形で石炭、電力、石炭化学工業、新素材の四大産業が主導する大型の工業団地にしていく狙いだ。大きくは寧東石炭基地、寧東火力発電基地、寧東石炭化学工業基地の3つからなり、第11次五カ年計画期(2006~2010年)の末期には6000万トン以上の石炭生産能力、600万kW以上の総発電出力、550万トン以上の石炭化学工業製品の創出を目標にしている。さらに2020年までに石炭生産能力1億トン、総発電出力2600万kW、送電電力1000万kW、石炭化学工業製品の生産能力を1350万トン以上にする目標を立てている。またここは中国における循環経済と資源の総合的かつ高効率利用のモデル地区となっており、発電用石炭の消費を300g/kW時以内に抑え、単位GDPあたりのエネルギー消費量を国内業界最先端レベルにする目標だ。そしてまた、この寧東地区および黄河沿いの一帯を開発、発展させることで経済振興、人口分布などにおける自治区全体のアンバランスを修正しようという思惑もある。
寧東基地は銀川市東南の霊武市と呉忠市の塩池県、同心県、紅寺堡開発区の4つの市県区にまたがっており、ここで試みようとしているのは循環型経済の実現だ。「資源の減量化、再利用、再循環」を合言葉に、経済効率のよい持続可能な発展の道を探ろうとしている。その柱となるのが石炭採掘における石炭脈石、炭層ガス、立て坑水の総合利用と化学工業における排出ガス、廃棄物、廃水、脱硫、石膏などの総合利用だ。
そして、雇用面では基地で3万人の労働者の雇用を実現するとともに、黄河沿いの都市に新たに80万の職場を創出し、中部の乾燥地帯から50万人の人々を移転させ定住させることを目標にしている。 03年のプロジェクト立ち上げからこれまで5年間で直接的、間接的に約2万の新たな職場が出現し、効果が徐々に現れ始めているという。
現在は、重点産業、インフラ、社会事業、環境保護、循環経済などに関わる22項目の計画の立案作業を終えて、建設中もしくは建設を終えた炭鉱で合わせて年間7000万トンを産出しており、1期工事を終えて操業を始めた火力発電、風力発電を合わせると寧東基地の総発電出力は230万kWに達している。このほか、基地内の宝豊集団や神華寧煤集団などのグループ企業が石炭からメタノールやジメチルエーテルを生産する試みを行っている。
この辺一帯は華北、西北、西南地区の接点で、甘粛、青海、新疆、内蒙古などの省・自治区からの通り道という地の利があること、開発用地が1000平方キロ以上あり、土地開発コストが低いこと、すぐそばを黄河が流れているため取水の便がよいこと、寧東炭田という13億トン級の炭田があり化学工業用・動力用として質がよいこと、銀川河東空港や包蘭鉄道、宝中鉄道、建設中の太中銀鉄道などのほか道路も整備されて交通の便がよいことなどの強みがある。
道路、鉄道などを含むインフラの整備に伴い、神華集団、華電集団、国電集団などの大企業グループが参入してきており、さらに華能(中国華能集団公司)、中電投(中国電力投資集団)、中広核(中国広東核電集団有限公司)などの電力・エネルギー大手も最近続々と戦略提携契約を結んでおり、今後、巨額の資金が投入されることになっている。
寧東基地の最初のプロジェクトとして04年に設立され、すでに稼動している馬蓮台火力発電所の背後には広大な開発用地が広がる
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