日本からも無償援助や日中緑化交流基金(通称「小渕基金」)に基づく友誼林造成などのプロジェクトが提供されてきたこの一帯の生態環境は、ここ20年間で大きく生まれ変わり、この期間につくられた「草方格」は2000ヘクタールにのぼり、07年だけで2320ヘクタールを造林、平均活着率は83%に達した。今ではモウス沙漠の中に東西42キロ、南北10キロにわたる緑の防護壁が築かれ、中東、アフリカなど同じ砂漠化の悩みを抱える国々からも政府関係者が視察に訪れている。私たちが同保護区を見学した日にも、たまたまエジプト、モーリタニア、モロッコ、シリアなど9カ国からの視察団が訪れており、ヨルダンの政府関係者は「ヨルダンの砂漠でもさまざまな方法を試みてきたが成功に至らず、ここの成果を参考にしたい」と話した。
7月1日、寧夏回族自治区での聖火リレーを締めくくる最終ランナーとして銀川市を走り、点火した王有徳氏。中国のメディアはその姿を「治沙英雄(沙漠改造の英雄)」として伝えた。
気の遠くなるような沙漠整備は今日も続けられている
文字通りの「愚公山を移す」。現代の「愚公」とも言える王有徳氏の努力は徐々に実りつつある。アフリカ・中東諸国からの視察団に説明する白芨灘防沙営林場の王有徳場長(中央)
貧困救済地区に棚田
本来、コストがかさむわりに見返りの少ない生態環境の改善に取り組んでいるのは白芨灘だけではない。
寧夏回族自治区の最南部に位置する固原市隆徳県は県の総人口の91%が農業人口、同じく南部の彭陽県は92%が農業人口で、両県とも黄土丘陵の谷あいにあり、年間降水量は最大500ミリ前後、それぞれ総面積の74%、92%の土地で土壌浸食や水の流失があるという典型的な西北部の貧しい農村で、貧困救済の重点地区に指定された県だ。
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