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元駐日特派員林国本さんの眼  
「物の見方」

自分の不勉強のせいか、筆者は中国の開発戦略についての見方を微調整する必要があることに気づき始めた。なが年、ジャーナリストとして後輩たちからも「尊敬」の眼で見られてきたが、「リップサービス」ではと勘繰りたくなるくらいの「評価」を含めて、大体オーバーなものが多いとはうすうす感じてはいたし、自分がいかに努力してきたかを自分でよく知っているので、そういう「評価」はまともに信じてはいないが、人にこきおろされるよりは誉めてもらう方が気持がよいことも確かだ。ひとつだけ、「手品のタネ明かし」をしておくが、筆者は自家用車を買えるおカネさえ、あえて高価な日本の原書を購入するために使ってきた。したがって、自分の仕事の分野では、人に頭を下げることがほとんどないユニークな世界の構築で成功に近い境地に達することができ、激動続きの中国において窓の外で吹き荒れるあらしなど「どこ吹く風」という超呑気な気分で暮らしてきた。

しかし、さいきんは、ジャーナリストとしての自分の「物の見方」の微調整の必要を感じることに2、3回際会してきた。中国における「西部開発」をどう見るか、ということがそれである。

以前、国内の一部の人たちの間では中国の東部はどんどん発展をとげ、レクサスなど高級車を乗り回している人たちも増えているが、西部は改革、開放の意識そのものが遅れているので、本当の意味でテークオフするには数10年はかかるという人が多かった。

しかし、さいきん、西部のいくつかの省を実地に見て来る機会に恵まれ、地元のシンクタンクの人たち、ジャーナリストの話を聞く機会もあったが、どうも意識そのものは、「国際ジャーナリストの古株」の1人と言われてきた筆者よりはよっぽど進んでいるような気がした。筆者は職業柄、日本のメディアを「めしのタネ」にしているが、中国問題というと、「悲観的に」書く傾向のある日本の一部メディアの視点の影響を受けたのではと反省している。やはり自分の足で調査研究すべきだと、思うようになっている。なにしろ、一部日本のメディアに掲載されている通りなら、中国は20年前にとっくに「大混乱」に陥っているはずである。ところが現実はどうか。環境問題とか、雇用問題を抱えながらも、前進しているではないか。有人宇宙船の射ち上げ、オリンピックの開催もうまく行ったではないか。

さいきん、中国経済を研究している日本の一橋大学の関満博教授とコーヒーを飲みながら、名刺を交換し、ご高説を拝聴する機会に恵まれた。

関満博教授については、筆者がまだ現役のジャーナリストだった頃に、中国の温州についてのその論文を見たことがある。一日本人がこれほど正確に温州の中、小企業について書いているのに目からウロコが落ちる気持になったことを今でも覚えている。教授はいずれ寧夏回族自治区の中、小企業、ひいては産業全般についてのレポートを上梓するつもりだとも語っていた。こういうものは、中国側としても関教授の版権(知財)を尊重することを前提として、即刻翻訳すべきだと思う。正確な視点を10年早くキャッチすれば、10年のまわり道を避けられることは常識の中の常識である。この10年間の時間をムダにしなければ、10万元そこいらの翻訳出版料なんか安い安い。1000億元の投資の節約になるかもしれない。

関教授をはじめその他の人たちの話を聞いて、筆者は自分の「中国の開発戦略」についてのジャーナリステックな視点をファイン・チューニング(微調整)する必要性を感じている。学びて自らの足らざるを知るのは、はずかしいことではないと思う。

要するに、沿海工業地帯の高度成長、太平洋の向こう側との貿易への依存のみでなく、中国の西部のように大胆に発想を転換して、石油資源の潤沢な中央アジアやアラブ世界との貿易、往来に着眼し、地元の強みを生かし、ユーラシア・ランドブリッジを存分に利用して、ブランド力のある製品をどんどんつくり出せば、人件費の高騰で悩む東部に追いつくのもはやいのではないだろう。

「北京週報日本語版」2008年9月10日

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