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元駐日特派員林国本さんの眼  
中国、中国人民にとっての試練

                                    林国本

今年は中国の改革、開放30周年の節目の年で、この30年の発展の過程をふりかえり、次の30年へ踏み出そうとしている矢先に、四川省北部の汶川県を震源とする大地震が発生した。この一帯は山間部にあり、山崩れで道路が寸断され、巨岩、巨石にさえぎられ、ライフラインもほとんど全滅状態となり、とくに汶川県は外部との通信が途切れてしまった。現地の状況をいちはやくキャッチするため、とうとう断崖絶壁の間にある壊滅状態の汶川の町に兵士がパラシュートで降下し、生き残っていた町役場の人たちと涙の対面をした。

数十人、数百人からなる人民解放軍の兵士も山岳地帯を越えて現地入りし、救援活動に取り組むことになった。

また、下流の都市を水浸しにしかねない崖崩れでできたせき止め湖に仮設導水路みたいなものをつくるため、人民解放軍の兵士たちが山を越えて現場にかけつけた。

中国の諺(ことわざ)に「蜀犬吠日(四川省のイヌは太陽を見て吠える)」と言われてきたように、四川省は雨天が続き、救援工事が思うようにはかどらず、本当にテレビの画面を見ていてイライラさせられる毎日であった。

今回の震災で、中国全体が一丸となって動いた。改革、開放の発展でいくらか豊かになった今日、多くの若者たちがコンピューター・ゲーム、カラオケ、ディスコに夢中になり、将来の中国は大丈夫なのか、と懸念する人もいた。豊かになることはすばらしいことだ。筆者の住んでいる団地では、次の世代の若者の中で、夫婦で車二台を持っている人もいる。しかし、一方で不登校とか、うつ病とか言うものがメディアで時々伝えられている。中国でも、心理療法士とかカウンセラーとかいう職業に従事している人も増えているし、パラサイト・シングル、フリーターというカテゴリーに入れられる人たちも見かける。

しかし、今回の局地的な自然災害の中で、命を賭して被災者の救援、献血のために列をなす若者たち、自費で空路四川省にかけつけたボランティアたちの姿を目にして、筆者は、中国には未来がある、という自信を持つに至った。

今回の震災の中で、諸外国、海外在住中国人、華僑華人らがいろいろと救助の手を差し伸べてくれたことにも感動した。筆者は数十年間日本と関連のある仕事にたずさわってきたこともあり、日本からのレスキュー隊の姿をテレビで見て感動した。数年前、日本の消防隊と中国の消防隊との交流のお手伝いをしたこともある。日本から耐震工学の専門家たちが四川省を訪れ、やがては耐震工学の面でも交流がおこなわれることになったらしい。

大震災は、中国にとって悲劇かもしれない。しかし、人類の歴史を見ても、どの国、どの国民、どの民族も、いろいろな挫折と曲折を乗り越えて成長してきたのだ。今回の震災からも、中国は教訓を汲み取るにちがいない。全国各地で、それこそ必死に展開されている仮設住宅を製造し発送するテレビの画面を見て、今後は危機管理の面でさらに検討を深めることになろうと思っている。今回の震災で亡くなった人たちのご冥福を祈る。

「北京週報日本語版」2008年6月4日

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