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元駐日特派員林国本さんの眼  
80年代生まれの若者たち

                  林国本

さいきん、中国の若手ジャーナリストの間でよく「80年代生まれの若者たち」という表現について議論されている。社会学とか、「アイデンティティー論」、あるいは一種の流行的表現として使われている「ポストモダン現象」というものについて、学者、研究者の間でいろいろ議論されている。むずかしい学術的な話は別として、ライフスタイルとか、物の考え方などを考察してみると、たしかにわれわれのような古い世代の人間とかなり違った一群の人間が育ってきている。プラス思考でこの現象をとらえるならば、この若者たちは、改革、開放の次の30年に活躍する人たちである。新しい考え方、発想の持ち主であるこの人たちの大部分は時代が彼らに与えた任務をまっとうするにちがいない。

この若者たちのかなりの人たちは、視野も広く、小学生の頃から英語を勉強し、大都市ではそれこそ小学生の頃からアメリカ人、イギリス人の教師とじかに触れ合う中で英語を勉強してきたので、英会話の能力も、われわれのような英文法とか英文解釈法とかいう静態的な書物を主とする英語の勉強をしてきた人間にはとうてい真似することのできない英語の実務能力をもっているものが多い。もちろん、じっくり腰を落ち着けて英語で書かれた原書を読む習慣の面では、われわれの方に一日の長があると思われるが、トータルとしては今の若者たちの方が国際化していることはたしかである。彼らは幼稚園の頃から英語や日本語、ドイツ語、フランス語に接することができる環境で育ち、高校生になった頃には、すでに国外に留学するプランを立てているものもいる。

彼らのデートスポットひとつをみても、われわれ古い世代の人間とは違う。彼らは、スターバックスとか、高級な伊イタめしのレストランとか、デラックスなホテル、バーなどでも実にさっそうと出入りしている。

筆者の子供の世代なんかは、同窓生の集いなんかでも、バーでバーボンやカンパリソーダを飲みながら、世間話をしているようだ。ほとんどが北京外大卒後、自由業とか外資系の会社に就職した若者たちで、ふだんはSUVなどを乗り回している。物の考え方も筆者とはかなり違うが、それでも40代の初期の人たちなので、ポスト80年代生まれとはまだかなり隔たりがある。5年の開きがあれば、話が合わなくなる、という説もあるくらいだ。

筆者の知人の娘さんで、35、6歳の女性がいるが、欧米系のIT企業の管理職として活躍しているが、まだ独身で両親は「そろそろ身を固めてはどうか」と心配しているが、本人はそういう話はもうやめてください、と言って、飛んでる女として活躍し続けている。もしかすると「身を固める」とか「結婚適齢期」とかいう言葉も、もう「私語」に近いような雰囲気となっている昨今である。これは中国の社会がどんどん前進的変化をとげていることの証左かもしれない。私の一族の中からも、ヨーロッパで博士の学位を取って永住してしまった若者もいる。グローバリゼーションという言葉に不快感を示し、それはパックス・アメリカーナの表現形態にすぎない、という人もいるが、世はすでにユビキタス・コンピューティングの時代、やはりこのトレンドについて自分も適切に進歩していかなければ、清朝滅亡の頃にあくまで弁髪をバッサリ切ることを拒みつづけた人間のようになってしまうのでは、と自嘲している昨今である。

「北京週報日本語版」2008年5月8日

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