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元駐日特派員林国本さんの眼  
新しい課題を乗り越えて成長

                               林国本

さいきんは、食糧価格の高騰、石油価格の高止まりと波動によって、中国国内でもとくに低収入層やマイカー族、タクシーの運転手の間でもいろいろ取り沙汰されている。テレビやメディアでもオープンに議論されている。しかし、それほど先行き不安に包まれている気配がないのは、やはり政府に対する国民の信頼感と、改革、開放30年らいの成果による自信の表われといっても過言ではない。

政府のトップ層は公開の場で、「なんの心配もない。中国の食糧備蓄は十分ある。自信満々だ。ビクともしない」と語っていた。アリとキリギリスのおとぎ話を引用するまでもないが、この30年間の努力で、いろいろな物資の備蓄は十分ある。したがって、天が崩れてくるのではないか、と不安感を抱くことはこの時点では杞憂と言って一笑に付きることができよう。

しかし、いろいろと気をつけなければならないこともある。2、3の例をあげると、開発区をわれもわれもとつくって、耕地を他の用途に使っていることがよく目につく。そして、国際レベルのゴルフ場をいくつもつくっていることもそれである。国外企業の誘致、国外ビジネスマンのライフスタイルへの配慮から、それも必要かもしれない。ところが、それがあまりにもオーバーになると、やがては「しっぺ返し」を食うことになる。

10数年前、レスター・ブラウンという外国の研究者が「13億の中国人をいったい誰が養うのか」と言ったことがある。その一、二年に中国は穀物の生産にちょっぴり力を入れたところ、大幅の増産となって備蓄のための倉庫が足りなくなり、うれしい悲鳴が聞こえるようになった。

だが、石油などエネルギー資源はやがては枯渇する、と言われている昨今は代替エネルギー資源の開発が重視されるようになり、トウモロコシなどの価格高騰が論議されることになった。少数の国では食糧価格の高騰で社会不安さえ招来している。中国では大きな自然災害が起こっても、ゆうゆうと食糧、寝具、医薬品を被災地に運び、ときには空から投下している。かつてSARS禍の発生際、ごく少数のあわて者が石油ショックのときにトイレットペーパーの買いだめに走ったごく少数の日本人のように、北京のスーパーに飛び込んで買いだめに狂奔したが、当局の関連部門が電光石火のごとくそのスーパーに物資を補給し、メディアを通じて冷静に対処するよう呼びかけたため、一夜にして鎮静化した。

次の30年の改革・開放のシナリオとグランド・デザインを描くにあたっては、13億の人口を養うための食糧の安全、エネルギー資源の安全をどんなことがあっても念頭に置かなければならない。

さいきんは、これまで西側から提供を拒まれてきた技術の自主開発に次々に成功していることが次々と公表されている。中国の高度成長を喜ばぬごく少数の人たちが、いろいろと妨害工作をおこなっている昨今であるが、こういう人たちは元中国仏教協会会長趙朴初氏の詩にあるように「一群のハエ」にすぎないが、それでもやはり、かぶとのヒモをさらに固く締めて次の30年に向かって、着実に足を踏み出すことが不可欠である。

「北京週報日本語版」2008年4月23日

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