林国本
今年の旧正月の前に、中国の貴州省の一部地域、湖南省南部は50年ぶりといえる大雪に見舞われた。これまで中国南部地域ではほとんどこんなにひどい雪害に見舞われたことがないので、救援対策の初動段階では、事態を甘く見ていたようで、かなり手こずったようだった。高速道路ではトラックや省域間を結ぶバスの長蛇の列ができるし、高圧電線に氷結して負荷がぐっと増えたため電線をつなぐ鉄塔がぐにゃぐにゃになって倒壊して、送電が不可能となり、電化でスピードアップした鉄道も運行不可能となり、それに旧正月の帰省ラッシュが重なり、たいへんな状態になった。さいわいにこうした事態に対応するうえでは政府に充分力があったので、すぐイニシアチブを取り戻し、他の地方からの架線工、技術者を集めて、やがてボトルネックとなっていた高速道路も再開し、鉄道も迂回運転などで、徐々に帰省客の輸送も再開した。もちろん、かなりの人たちは、大局的見地から帰省を取りやめ、職場のある現地で旧正月を過ごした。地元の政府、民政部門や労組も、いろいろなイベントを催してこの人たちをあたたかくもてなした。中国人にとって旧正月の一家団らんは大切な習俗で、あえて帰省をやめたことは、たいへんなことである。
政府関係部門の迅速な対応で、復旧工事もスムーズに進み、やれやれという段階まできた訳だが、今回の出来事からいくつかの教訓を汲み取らなければならない。(1)、経済の大発展で国力も増強し、国民の生活水準も向上しつつあるが、それに浮かれていてはならないということである。アメリカや日本のような発達諸国でさえ、ハリケーン・カトリーナや新潟大地震などでかなりの被害を受けたぐらいである。ましてや発展途上国の中国にとってはなおさらリスク・マネジメントの意識を強化する必要がある。(2)、「危機管理」というか、リスク・マネジメントというか、こういう分野における実戦的な研究を強化することである。水害などに対してはかなりの対応措置がとられているようだが、大雪害、それも50年ぶりともいわれる災害が発生したのである。ふだん雪などほとんど降ってない地域などに対するリスク・マネジメントも考えておく必要がある。
たまたま、筆者も本望ではないが、子どもが海南島の三亜にセカンド・ハウスを持っているので、家族旅行に出かけ、この大雪害と関連のあるゴタゴタに巻き込まれ、上海の浦東空港で海口行きのフライト便が10時間以上も遅れて苦労した。近代化を誇る空港、2010エキスポを前に自信満々の上海も空港の管理、乗客への対応はとても合格はつけらない。「自然災害のとばっちりだから、我慢する以外にないさ」と割り切っているIT関係のエンジニアもいたが、一ジャーナリストとして、上海の空港側には失礼だが、お客さんに対するサービスはいくら大目に見ても合格点はつけられない。エキスポをやるくらいなら、もっと努力する必要があろう。イライラしているお客さんたちへの欠航便についての適時のお知らせなどのコミュニケーションをもっと強化することである。さらに加えて、中国のハワイといわれる三亜も、昨年、筆者はアロハシャツに半パンで過ごしたが、今年は毛糸のセーターにダウンベストで半月も過ごした。なんのためにわざわざ来たのかと、イライラしたバカンスであったが、昨年は『キャノン特許部隊』という本を熟読し、今年も本を熟読して、ロスを最低限に抑え、プラスに切り換えることに成功した。家族の気嫌を損わないための柔軟な対応も、たいへんな苦労を要するものだ。
数年前、日本のある総合商社の幹部が退職後、「危機管理」の会社を立ち上げ、リスクマネジメントについての本を著わし、筆者もそれに目を通したことがある。三亜から帰ってきて、この本をもう一度読みなおしてみようと思っている昨今である。
「北京週報日本語版」2008年2月26日 |