林国本
一介のジャーナリストとして、なが年、ユニークな国際報道の世界の一角でパフォーマンスをつづけてきたが、発展途上国である中国の特色とでもいうか、あるいはこれまでこの類いの働き手を育成するシステムがなかったせいか、皮肉を得意とする後輩から、佐渡に最後まで残って消え去った「トキ」のような存在ですね、と言われているが、「トキ」なら「トキ」でいいだろうと、今だに国際報道のフロンティアを視野にとらえてロマンを追いつづけているが、さいきんは雑学、雑読の一側面として、環境問題に関心をもつようにもなっている。
筆者たちの少年時代には、よく中国は「地大物博」、つまり国土が広大で、資源が豊かである、と言われていたが、さいきんは専門家、学者諸氏は「どんでもない」、国土はロシア、カナダなどにくらべれば、それほどでもないし、資源も、とくに死活を制する石油資源となると、とても豊かとは言えたものではないようだ。
それにさいきんのモータリゼーションだ。筆者も若ければ車の一台ぐらいは買っていたのになあ、と思っているが、これは当然と言ってもよい発展の趨勢であり、食い止められるものではない。また、自動車産業の発展は一国の産業技術の総合力を示すものであり、中国にもGM、トヨタ、ホンダのような企業があって当然である、と思う。
だが、よく連休の家族旅行で高速を利用しているが、ガソリンスタンドで列をなす車が、水道の水のようにガソリンを補給してもらっているのを見て、やがて13億の人口のかなりの人たちが車を持つようになれば、地球の化石燃料資源はどうなるのか、ということが頭に浮かんでいる。
日本の評論家落合信彦氏の『石油戦争』という本を見ても、石油資源の争奪のための大国のパワー・ボリティックスのすごさが分かる。シーレーンの防衛という言葉も、資源のあまりない日本のみに使われる表現ではなくなり、その他の国、地域にとっても他人事ではなくなりつつある。北東アジアのある国では石油の不足から、国防のために必要な、常時の軍事演習もストップしているという、衛星を使ってつかんだ情報をもとにした記事を目にしたことも覚えている。中国では農業の機械化も進み、ガソリン、ディーゼル油の消費は激増している。つまり、「油断」となれば、たいへんなことになる構造ができあがりつつある訳だ。
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