旧暦12月23日:「祭竈節」「送竈」
この日、一家の諸事をつぶさに見てきた竈(かまど)の神である「竈神(そうしん、竈君とも言う)」が、「玉皇上帝」に報告するため、天に上る旅に出る。「玉皇上帝」は道教と仏教の混淆(こんこう)したもので、元始天尊のような神格の高い神ではなく、ふつうの人間が直接関わりあうことのできる最高の神であると考えられている。玉皇上帝は「竈神」の報告を受けて審査し、人間の言行の善悪を判断する。善行が多ければ幸福を授け、悪行が多ければ災厄を科す。そのため、人々は竈神のご機嫌をとったり、“甘い報告”をしてもらうために飴をお備えしたりする習慣もある。
旧暦12月24日:「掃房日」
掃房日のいわれは、昔、人には「三屍神」というとても意地の悪い、人の悪口が大好きな神がついており、この三屍神は天に上っては大神様に人間世界での天の悪口を、嘘八百を並べて報告していたため、本当のことを知らずに怒った天は、人間世界の蜘蛛の巣が張っている家をすべて潰すよう命令した。これを見た三屍神は楽しくてたまらず、自分で家々に蜘蛛の巣を掛けてまわった。しかしある日竈神がこれを発見し、竈王爺と相談して、人々の家に蜘蛛の巣が張らないよう、毎年12月24日に掃除をするよういいつけた。それからは、潰される家もすっかりなくなったという。竈祭りが終わるといよいよ年越しの準備が始まる。
旧暦12月31日:「除夕」「年三十」=大晦日
竈の神様が帰って来る日。お供えの餃子を一家で包む。このときの餃子は「元宝」という昔の金の形(船にお饅頭が乗っているような形)に包み、山盛りに盛られた餃子はお金持ちになるという意味を含み、更に餃子に綺麗に洗ったコインを包みこんでおき、一番先にコイン入り餃子を食べ当てた人はその年金持ちになると言われている。餃子には新と旧が入れ替わる「更歳交子」という意味もある。餃子を食べる習慣は、12月に寒くて耳も凍る様子を見た医者が、貧しい人も寒さを凌げる食事として考えついたとも言われている。そのため、昔の餃子の具は羊肉や唐辛子など体温を上げる作用のある材料が使われた。
また、この日は「春聯」(おめでたい対句を赤い紙に書いた掛け物)を家々の玄関の左右に分けて貼る。また玄関のドアは、翌日の正月一日の朝まで開けてはならないと言われている。
夕飯を食べ終わると、年長者が子供たちに「紅包・圧歳銭(お年玉)」をあげる。紅包は親から子へ、既婚者から未婚者に贈られる。今では旧正月前のボーナスも「紅包」と呼んでいる。紅色(赤)は力や楽しさ、好運を象徴する中国人の大好きな色。「圧」は邪悪な神を押しつぶす意味で、「歳」は「崇」と同じ発音のため、圧歳銭をもらった子供は平安に一年を過ごすと言われた。
大晦日の夜は、一睡もせずに夜を明かす習慣がある。深夜零時になると家の中にいた悪鬼や妖魔、悪霊を一気に退散させて、歳神様(としがみさま)を呼びこもうという意味を込め、爆竹が朝まで鳴り響く。これは人を食う残酷で獰猛な「年」という怪獣を撃退するためで、明かりをつけたまま一家全員が起きている。
旧暦1月1日 初一
年始回り「拝年」を始める日。元日、1月1日は奇数の重なる日なので女性は外出しないほうがいいとされる。男性は親戚や友人知人、仕事上の付き合いのある人々の家を訪問し、お祝いの言葉を述べる。名刺がわりの挨拶状(年賀状の原形)にめでたい言葉が書かれた「拝牌」を渡し、子供たちに「紅包」を渡す。
~さまざまな挨拶の言葉~
「恭喜發財」、「財源廣進」、「財運亨通」、「金玉満堂」、「千金百順」 財産がたまりますように
「萬事如意」、「五福臨門」、「新春大吉」、「五穀豊穣」
ご家族が幸せで、願い事がかないますように
「新年好」 良いお年を
「新年快楽」 楽しい一年を
「新年万事如意」 順調な思い通りの一年を
「新年心想事成」 願い事が実現できますように
旧正月2日目
親戚や親友、隣人に対し引き続き年始回り「拝年」を行う。
2日からは女性も晴れ着を着て年始の挨拶にでかける。
男性たちは酒を飲み、麻雀などの賭け事に1年の運を託す。
正月には「破」、「苦」、「空」、「割」、「砕」、「終」、「絶」、「亡」、「失」など縁起の悪い言葉は口にしてはならない。
この日は、結婚して家を出た娘たちが実家へ里帰りする日でもある。新婚の場合は、その夫も贈物をもって一緒に顔を見せる。
旧正月4日目
初詣の日。 午後には、竈の神が従者とともに玉皇上帝のところから帰って来るのを迎えるため、お供え物の準備をする。竈の神が帰ると、神の監視から解放されていた期間も終わる。
旧正月5日目 初五・破五 福の神の誕生日
酒肴を並べて、福の神を迎える。この日、お供え物は祭壇から下げられ、いつもの生活に戻る。
昔の習慣では、農暦の12月23日から正月の15日までは「大年(新年を迎える期間)」とされているが、本当の「新年」は、大晦日の日から新春の初五(農暦正月五日)までで、この五日間は「火」を点けず、「鋏み」に触れず、「包丁」にも触らない生活をする。伝説によると、火をつけて料理を作ると「火の災」に、鋏みを使うと「口喧嘩の災」に、針を使って裁縫をすると「目の災」に、包丁を使うと「出血の災」にそれぞれ遭うとされている。また、この日はゴミを捨てず、「宝を貯める」とされているが、一年間苦労してきた家庭の主婦を休ませるという意味もある。
「破五」の意味は、この日を過ぎればすべてのタブーが解禁されて、本当に新しい春を迎え、新しい年が始まるとの意味。この日を迎えるため、北方の多くの家庭では餃子を作り、わざわざそのうちの数個を破って「破五」を迎える。「初五」の日は新春の始まりというだけでなく、「財神(財産を配る神)」の誕生日とも言われている。
「北京週報日本語版」2008年1月25日 |