馮昭奎(元中国社会科学院日本所研究員)
中日両国の間に、戦略的な協力関係が構築できるかどうかは、共同の戦略的な絆、戦略的な相互信頼関係、戦略的な互恵協力の拡大が達成できるかどうかによって決められる。
中日間で新たな戦略的な絆を結ぶことはできるか
冷戦がまだ終わっていなかった前世紀の80年代は、中日関係発展にとって最もよい時期だったと見られている。当時の中日関係が順調な発展を遂げられた最も重要な原因は、いわゆるソ連からの脅威に共同で対抗することにより結ばれた戦略的な絆であるという説がある。冷戦終了後、この戦略的な絆も自然に解消された。ところが、現在、環境的要素が国際関係で占める地位が急速に上昇しており、環境問題、とくに気候温暖化の問題が国際関係と秩序の見直しと転換を促しており、人類文明の新たな進化を促進するものとなっている。環境安全及びその他の従来の安全分野に属していない問題は、中日両国を結びつける新たな戦略的な絆となる可能性が大きい。
中日両国はともに、環境汚染などの従来の安全分野には属していない問題の重要性と緊迫性を高度に重視しており、こうした問題の解決をめぐって協力を強化することの重要性をも十分に認識している。胡錦涛主席はこのほどAPEC首脳会議で、アジア太平洋地域の「森林ネットワーク」の構築構想を明らかにし、環境問題の重要性をアジア・太平洋地域各国の「全体安全」の確保という高度にまで引き上げた。こうしたことから、中日両国はそれぞれの力を発揮して協力し、モンゴルやカザフスタンなどのアジア諸国とともに、空前の規模の植林事業や人工増雨・雪事業を展開し、土地の砂漠化や気候温暖化を食い止めることにより、両国、アジアひいては世界の人々のために寄与することは、中日の新たな戦略的な絆を強化する最も現実的で効果的なルートとなるだろう。
中日は戦略的相互信頼を実現できるのか
中日戦略的相互信頼を強め、両国間の戦略上の判断ミスを回避するため、両国間の戦略的相互信頼に影響する一連の課題を解決しなければならない。
まず、双方は相手国の発展あるいは台頭に対して正しく対応できるかどうか。
日本は戦後数十年の平和的発展を経て、初めて平和裡に勃興したアジアの国である。中国は改革開放実施以来、持続的かつ急速な経済成長を維持し、平和的発展の道を歩んでいる。
当面、日本側では、いくつかの政治勢力は戦後日本が歴史的教訓を汲み取り、平和的発展の法的保証とされている現行憲法を改正するよう主張し、「戦後体制からの脱却」を図っており、これは日本が戦後の平和的発展の理念を放棄することを意味しているのかと疑われている。これについて、日本は確かにその国家戦略の今後の目標と方向性を明示しなければならない。
中国側では、中国の指導者が平和的発展の道を歩むことを明確にしており、その上中国の平和的発展は決して歴史上覇権国家が戦争を手段とした「勃興」の歴史の再現ではない。
第2に、双方は、自らの根本的・長期的国家戦略を言行一致させ、世界に宣言することが必要で、相手国あるいは国際社会に、戦略目標や戦略方針が明確でなく、曖昧で、現在及び将来において一体何を目指しているか不明瞭であると思われないようにするべきである。これを基礎に、双方は相手国の発展戦略が自国にとって脅威ではないことを確認することが必要で、そうしていわゆる「相手国の脅威」を自らの国家戦略制定・実施の条件にすることがなくなる。同時に、双方は相手国に正確な戦略的位置づけを与え、相互尊重・相互協力し、相手国の自国の戦略目標及び利益に基づく政治的意志や訴求を理解することが必要である。
第3に、双方は、異なる社会制度の国同士が平和共存することができ、そしてそうしなければならないことについて、再度確認することが必要である。
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