2006年――(1)8年連続で過去最高額を更新、初めて2,000億ドルを突破
2006年の中日貿易総額は2,112億9,551万ドル(前年比11.5%増)となり初めて2,000億ドルを突破した。金額ベースでは99年以降8年連続で過去最高額を更新したものの、伸び率としては3年連続前年を下回る結果となった。輸出の伸び率は2年ぶりに前年を上回ったものの、輸入の伸び率は2年連続で前年を下回った。貿易収支の赤字幅は255億4,286万ドルとなり3年ぶりに縮小した。
(2)対中輸出-キーコンポーネンツメーカーが競争力を発揮、電子部品、素材、自動車関連が牽引-
①キーコンポーネンツが輸出を牽引。中国はIT及びデジタル関連製品をはじめとするあらゆる製品の世界の組立工場となっており、主に欧米や中国などの巨大消費市場に向けて完成品が供給されている。なかでもデジタル家電製品は多機能化・高度化の進展が見られ、その心臓部となるキーコンポーネンツの重要性が一段と増している。その中で技術力を持つ日本の部品メーカーが需要の増加を追い風に競争力を発揮しておりIC(前年比32.0%増)が増加している。
②素材関連製品の伸びが高い。非鉄金属(同70.1%増)は現地調達が難しい陰極銅及び銅やアルミの板・箔などが牽引。また、化学製品のなかでもプラスチック(同23.7%増)が好調。素材の国際価格高騰の影響が大きいが、自動車、家電などで需要も拡大、数量も伸びている。
③日系完成車メーカー及び部品メーカーの生産拡大に伴い、現地調達が困難な高付加価値の自動車関連部品の輸出が伸びる。自動車の部分品(同28.2%増)ではギアボックス、ブレーキ、クラッチ並びにそれらの部分品が増加。また、一般機械では原動機(同15.9%)や加熱用・冷却用機器(同25.8%増)が好調。生産設備である金属加工機械(同9.1%増)も堅調に増加している。
④中国国内の景気拡大により富裕層を中心に日本製品の購買意欲は旺盛。日本国内で生産される高級デジタルカメラや家庭用ビデオカメラといった映像記録・再生機器(同102.9%増)が顕著な伸びを示しているほか、日本製高級乗用車を求める動きがあり、乗用車(同15.9%増)輸出が増えている。
(3)対中輸入-国内需要の減少とパソコン需要の減速で伸び悩み-
①輸入伸び悩みの主要因は、音響映像機器(同5.8%減)の国内需要の減少と事務用機器(同2.0%増)の需要減速。前者は、日本国内における小型液晶パネルやブラウン管TV、また、VHSビデオタイプの録画再生機輸入などが急激な落ち込みを見せている。後者は、特にパソコンの需要減速が響いており、その要因として、(1)大手企業の買い替えサイクルの谷間の時期であったこと(パソコン法人市場前年比▲0.2%)、(2)個人消費者が薄型TVの購入を優先させていること(同個人市場前年比▲8.0%)などが挙げられる。また、(3)多くのパソコン製品が地デジチューナーを搭載したことによって製品単価が上昇し購入意欲が減退したことも影響していると考えられる。
②中国が国内消費を優先させていることから石炭(同18.8%減)は輸出余力が低下。鉄鋼(同6.7%減)についても、2005年に鋼板や熱延薄板などの比較的付加価値の高い製品の輸入が増えたものの、結局、品質面で問題が多く、2006年はその反動のため減少。加えて、欧州や米国、ASEAN、韓国など、日本より市場価格が高い地域に中国が輸出を優先させたことも影響している。
③2006年5月29日から施行されたポジティブリスト制度導入で生シイタケ(27%減)やエンドウ(34%減)などの輸入が大幅減。同制度施行から2006年11月末までの半年間に残留農薬で違反となった輸入食品は264件あるが、うち中国からの輸入食品は87件と最多であり、このうち84件が新制度で新たに定められた基準値を超えたものとなっている。野菜は円安要因もあり金額ベースでは5.8%増加したが数量ベースでは1.4%減少。特に生鮮野菜は14%減となった。数量減少の理由として農業関係者は「暖冬の影響もあり日本産野菜が潤沢に出回り国内相場が低迷していたことから、中国産野菜を輸入する必要がなかった」と価格の影響による需給要因を指摘する。また、小売関係者は「消費者の食に対する安全意識の高まりにより国産野菜需要が増えている側面もある」と言う。中日の輸出入業者は中国産生鮮野菜の扱いに慎重になっていると見られる。
(4)2007年は輸出入を併せた貿易総額で中国が米国を抜いて日本の貿易相手国第一位に踊り出る見込
①日本の貿易総額における米中のシェア差は0.2ポイントまで接近。2007年は米中のシェアが逆転する可能性が高い。2006年、日本の対世界貿易総額における前年比伸び率は9.7%。そのうち対中貿易は11.5%の伸び率を示している。また、貿易総額における中国のシェアは17.2%である。一方、対米貿易の伸び率は7.2%。また、貿易総額における米国のシェアは17.4%である。
②中国との貿易が拡大する理由として下記4点を挙げる。(1)世界経済は拡大基調にあり、中国から世界市場に向けた製品供給は増加。それに伴い日本からのキーコンポーネンツ輸出も引続き増加する、(2)中国国内で日本製品需要は旺盛であり、自動車やデジタル家電製品などの輸出が堅調に推移すると予想される、(3)企業内国際分業及び生産の工程間分業の動きが更に進展。価格や性能による製造拠点の棲み分けが一層進み、現地調達が困難な半導体等電子部品、自動車関連部品・部材などでは日本からの高付加価値品の輸出が増加。一方、中国からは汎用品の輸入の増加が見込まれる。(4)ウィンドウズビスタ製品の法人買い換え需要が期待でき事務用機器(パソコン)の輸入が増えると予想する。
2005年――(1)7年連続で過去最高額を更新、拡大のペースはスローダウン: 2005年の中日貿易総額は1,893億8,736万ドル(前年比12.7%増)と金額ベースでは1999年以降7年連続で過去最高額を更新した。中日貿易は依然拡大基調にあることに変わりはないものの、伸び率では輸出入ともに前年を下回り(輸出:2004年前年比29.0%増→2005年同8.9%増、輸入:同25.3%増→同15.7%増)、その拡大のペースはスローダウンしている。
(2)半導体市況の低迷、自動車の現地生産拡大により輸出は伸びが減速: 輸出は803億6,297万ドル(前年比8.9%増)と、99年以降7年連続の増加となったが、伸び率は減速した。品目別で大きなシェアを占める電気機器と一般機械の伸びが低調で、主だった具体的な要因は以下のとおり。
①上半期の半導体市況の低迷
電子部品(同8.7%減)は数量が伸びたものの金額では減少した。
②自動車関連の直接投資による現地での生産増加
日系自動車メーカーの中国での現地生産が本格化したため自動車(同21.4%減)は前年実績を大きく割り込み輸出の伸びを減速させた。一方、自動車用エンジンなどの原動機(同32.0%増)や自動車の部分品(同9.0%増)は輸出が増加した。
③中国におけるインフラ・設備投資等の落ち着き
油圧ショベルなどの建設用・鉱山用機械(同27.5%減)や加熱用・冷却用機器(同16.7%減)が減少。工作機械などの金属加工機械(同15.5%増)も伸びは減速。
日系企業をを含む外資系企業では、パソコンやデジタル家電製品等の製造拠点の対中シフトが進む中、材料・部品等の現地調達化が加速し、日本からの輸出は高付加価値製品や現地調達できない基幹部品等に絞られる傾向が強まっている。また、原油や鉄鉱石等の素材価格高騰もあり、プラスチック(同19.1%増)、鉄鋼(同15.7%増)は金額ベースで輸出の伸びに寄与したものの、数量ベースではそれぞれ同6.3%減、同16.4%減となり、価格上昇がなければ輸出の伸びはさらに減速したと考えられる。
(3)IT関連完成品が輸入を牽引、輸入は初めて1,000億ドルを突破: 輸入は1,090億2,439万ドル(前年比15.7%増)と、99年以降7年連続の増加となり、ドルベースで初めて1,000億ドルを突破した。パソコンやプリンターなどの事務用機器(同19.0%増)、およびデジタル携帯音楽プレーヤーなどの音響映像機器(同28.7%増)といった完成品輸入が増加した。この背景には、2004年下半期から2005年央まで続いたIT関連製品の在庫調整が一巡したこと、日本国内の景気回復を受け個人消費が堅調に推移していることが挙げられる。繊維製品(同5.3%増)は日本の厳冬による冬物衣料需要を受け、11月から輸入が急増した。鉄鋼(同27.6%増)、半導体等電子部品(同22.1%増)、科学光学機器(同8.1%増)なども、外資系企業の中国製造拠点ではここ数年の間に増強した設備が本格稼動し汎用品を中心に安定生産できるようになってきており、順調に増加した。
(4)貿易収支は赤字幅が拡大し過去最高に: 2005年は輸入の伸びに比べ、輸出が伸び悩んだことから日本の対中貿易赤字は286億6,143万ドルとなり、2年連続して赤字幅が拡大し過去最高となった。また中国は引き続き最大の貿易赤字相手国となっている。
(5)日本の輸入全体に占める中国のシェアは拡大: 日本の輸入全体から見ると、野菜や繊維製品、玩具類等やその他家庭用品といった生活関連品、パソコンなどの事務用機器および音響映像機器といった家電関連品などで、中国のシェアが5割を突破。多くの品目で日本の輸入全体に占める中国のシェアが拡大している。
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