日本人投資家の熱意をかき立てた中銀香港
02年、中銀香港が香港聯合証券取引所に上場した。
岳志明氏は「当時の中銀香港がIPOの世界向け新規配分ルールを利用し始めた。日本の個人投資家向けの「非上場公募」(POWL)だ。中国資本の企業が初めてPOWLを行ったのだ。その際、野村証券は大規模な販売体制を敷き、これに全力を注いだ。最終的に、POWLによって約8万人の日本投資家から29億ドルの資金を調達し、発行計画を大幅に上回ることになった。世界の株式市場の不況を背景に、日本で株式募集に成功したことで中銀香港は最終的なIPO価格を引き上げることになった。
当時、中銀香港の日本での株式募集にはすべて野村証券が責任をもっていたが、POWLが始まるとすぐに高値の需要をもたらし、第1週目で6億ドル以上に達した。最終的に、日本の投資家は発行総額の12%の株式シェアを取得した。
中銀香港が日本での株式募集に成功した後、中国の大型国有企業が香港で上場しさえすれば、必ず日本で株式の一部を発行し、日本の個人投資家は常にこれに深い興味を示すという傾向が形成された。
岳志明氏によると、日本の個人投資家は中国企業への投資に期待しており、価格に対してはあまり敏感ではないが、株価収益率と価格レンジしか見ないわけではないという。投資家がより重視するのは、企業が中国のコンセプトや業界における良好な地位を持っているかどうかだ。日本の個人投資家は中国の大型企業がPOWLを実行した際に好リターンを得たことで味を占め、投資への信念を固めていった。こうして中国企業が株式募集しさえすれば、彼らの投資意欲を引き起こすことができるようになった。
こうした“非上場公募”の利点は、株式を募集する企業が最短期間に最低のコストで、日本の個人投資家から多額の資金を調達できることにある。この特別な株式募集方法が日本人投資家の中国企業に投資する熱意をかき立てた。
日本上場企業はクリーンに
日本の会計基準は日本に上場する中国企業が特に注意を払わなければならないものである。李傑氏によると、日本の会計基準と国際会計基準には大きな相違が存在しており、東証は主に次の三つの面で上場企業を審査するという。
第1に、企業の持続性、収益性。
第2に、企業の情報公開の状況。その中には、資料が全面的かつ正確であるかどうかや会計組織が完備された状況にあること、また企業が四半期ごとに公表する業績状況などが含まれる。第3に、企業の取締役などに対する審査。東証は上場の意向を示す企業に対し、書類上の審査だけでなく、対面して話し合うために訪問調査も行っている。
審査の中で、東証は企業経営の健全性を重要視しており、当該企業と特別な利害関係にある者、人事関係あるいは資本関係のある企業およびその他の特定企業・職員との間で、不利な条件で取引を行ったり、株主に帰属すべき利益を不正に流失させたりしていないかどうかを重点的に調査する。
岳志明氏は「企業は早めに会計監査を行うべきで、世界四大会計事務所に委託したほうがいい。さらに企業には日本語が分かる人材が必要で、上場後も投資家に対し長期間PRを行う必要がある」と提言した。
李傑氏によると、日本市場に重要な業務があればいかなる企業でもいずれも日本上場に適しているが、どこに上場するかは所属する業界に基づくべきではなく、資金調達後の企業の業務開拓計画に基づくべきだという。
現在、野村証券に対し日本での上場の意向を明らかにした中国企業は、製造、サービス、ハイテクなどの業界に数社ある。岳志明氏は、「製造業が日本で上場すれば先行きは明るいはず。というのは、日本は製造業に長じた国として、戦後、製造業に全力を注いできており、国民も製造業に対しては特別なこだわりがあるからだ」と語った。(文:彭化英)
「北京週報日本語版」2007年11月26日 |