国家月探査計画の首席科学者、欧陽自遠・中国科学院院士(科学アカデミー会員)は8日午後、貴州省の青年講座で「宇宙探査と嫦娥計画」について語った。「貴州都市報」が伝えた。
【10年内に有人月面着陸をする国はない】
中国が「嫦娥計画」を発表した頃、米国、ドイツ、ロシア、日本、英国などの国々も月面着陸計画を発表し、世界は2度目の月探査ブームに沸いた。だが欧陽氏は「10年内に有人月面着陸を実現できる国はない」と指摘する。
米国は1960年代に6回の有人月面着陸を成功させた。欧陽氏は「米国は月面着陸の成功後、『冷戦』の集結にともない、大量の時間・マンパワー・予算をスペースシャトルや宇宙ステーションの研究にまわし、『月探査』事業は停滞した。今になって米国が『月面着陸計画』を再開するには、すべてを最新技術に換え、より先進的で信頼性の高いロケットと宇宙船を開発しなければならない。こうした作業を10年内に完成するのは不可能だ。ほかの国となると、さらに長い時間が必要だ」と語る。
【月のサンプルを地球に持ち帰る】
欧陽氏によると、中国が現在実現を目指している月探査計画は、「周回」「着陸」「帰還」の3段階構成で、これらは「無人段階」である。まず月に向けて衛星を打ち上げ、全面的・系統的な探査を行う。月の「資源」を解明した後に、初めて着陸機を送り込み、特定の地区を精密に探査する。そして第3段階が、月のサンプルを地球に持ち帰ることだ。
「ヘリウム3は地球にはわずか15トン前後しか存在しないが、月にはおよそ100~500万トン存在する。これは人類社会が長期間、安定して、安全に使用できる、クリーンで安価な、コントロール可能な核融合エネルギーの原料となる」「こうした核融合による発電が実現した場合、1年間の発電に中国が必要とするヘリウム3は約10トン、全世界では約100トン。人類は1万年以上のエネルギー源を手にすることになる」――。
欧陽氏は、中国の月探査計画には、外国が行っていない多くのミッションがあるという。たとえば中国は月のすべての土壌を全面的に残らず探査し、ヘリウム3などの埋蔵量を算出し、ヘリウム3に関する最も信頼度の高い報告する予定だが、これは全人類に幸福をもたらすものだ。
写真1:欧陽自遠院士
写真2:衛星「嫦娥1号」予想図
「人民網日本語版」2007年8月10日
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