北京の住民は「三元」マークの牛乳を好む。理由は品質が良いから。品質保証のかぎは、優良な乳牛種だ。
張暁霞さんは北京三元グループの乳牛センターの中で種つけ牛の育成にかけてはナンバーワンだ。
1977年秋、高校を卒業した彼女は、乳牛の育種事業に身を投じた。若いみそらの女の子がなぜ、よりによって牛の飼育に惚れ込んだのか、家族も理解できず、同級生も不思議がった。実は、張さんが生まれた後、病弱な母親は母乳が十分に出ず、彼女に羊の乳を飲ませざるを得なかった。そのこともあって、物心がついてからは、大きくなったら牛を飼い、すべての人に牛乳を飲ませてあげたいと夢見るようになったのだ。
中国の乳牛の乳生産量は先進諸国の半分程度にすぎない。それは乳牛育種や飼育管理のレベル、優良品種の普及率と密接に関係している。
張さんは既存の優良雄牛の精液でより多くの高品質の冷凍精液を生産し、中国の乳牛改良のため働こうとひそかに決意した。
海外で業務交流を行った時、新鮮な精液の体積を測る際、秤で分量を計測する方法を取っているのに気づいた。試験管の目盛りを目測するというこれまでの中国の方法は、精液を試験管に入れる際に泡がたつことで、目測には誤差があり、正確性に欠け、精液を浪費することがある。海外の計測方法では、1ミリリットルの精液ごとに冷凍精液が5袋増え、1年間に余分に生産できる精液は驚異的な量だ。そこで彼女は、外国人専門家に謙虚に教えを請うたほか、専用の試験管を特注し、精液測量の正確性と精液の利用率を高めた。
自然な条件のもとでは、雄牛と雌牛は1度の交配によって1頭の牛しか生むことができない。先進的な人工授精技術を採用すれば、雄牛に週に2回交配させることができ、そこから生産した冷凍精液は200頭の雌牛を妊娠させ、約200頭の子牛を産ませることができる。これは、乳牛の遺伝子の質を迅速に変えるにはきわめて重要なことだ。
精液を冷凍するには希釈液が必要だが、張さんは、希釈液の浸透圧と精液の浸透圧が異なり、これが冷凍精液の品質に影響を及ぼすことを発見した。1990年、実験を繰り返し、過去の方法を変えたところ、精液の質が大いに向上し、人工授精による受胎率が上がった。
知識は運命を変えられる、と張さんは確信している。彼女は「人はたとえ学歴が低くとも、絶対に知識を持たなくてはならない」と考える。もともと高卒の学歴だけだった張さんは、中国農民大学の畜禽管理、北京農学院の畜牧獣医、北京農工商職工大学の企業管理の三学科を専攻した。今では農業部の種畜の生産・経営・許認可分野における専門家だ。
乳牛センターの責任者となってからは、張さんは以前に増して忙しくなった。だが、どれほど忙しくても、必ず牛舎を見回る。彼女にとって、牛舎の見回りはこの上ない喜びだ。
「北京週報日本語版」2007年10月11日 |