徐敦信 元駐日中国大使
この35年の総括
今年は中日国交正常化35周年、盧溝橋事変70周年に当たる。盧溝橋事変から国交正常化までの35年間と国交正常化後の35年間に、中日関係は、戦争から平和へ、対立から協力へ、さらに不倶戴天の敵から、同じ舟に乗り合わせ、互いに助け合う関係へと変わった。これはまさに天と地の差ではないか。
今年は中日国交正常化35周年、盧溝橋事変70周年に当たる。盧溝橋事変から中日国交正常化から始まった35年をどのように高く評価しても、評価しすぎるということはない、と私は思う。もちろんこの35年、毎日良い天気ばかりが続いたわけではない。「天に不測の風雲あり、月に満ち欠けあり」と言われるように、これは自然なことである。
現代の最も高級な乗用車でも、使い始めは一定期間の「慣らし運転」が必要であるという。ましていわんや中日関係のこの35年は、国際情勢が激変し、それぞれの国内情勢も大きな変化を遂げた。私はこの35年の中日関係を、次の三つに総括できると思う。
①飛躍的に発展し、大きな成果を上げ、双方に福をもたらし、世界も恵みを受けた。
飛躍的に発展し、巨大な成果をあげたことは、多くのデータから説明できる。例えば、35年間に両国の貿易総額は200倍に増えた。
指摘しておきたいことは、政治的には、双方が三つの重要文献(『中日共同声明』『中日平和友好条約』『中日共同宣言』)を共同で制定し、一連の重要な共通認識に達したことである。それは例えば、「中日関係を発展させる四原則」や「戦略的互恵関係の構築に努力すること」などである。
経済的には、協力規模の拡大につれて相互依存が深まり、「あなたの中に私がおり、私の中にあなたがいる」という状態になった。中日両国は双方にとって欠くことができない重要なパートナーとなったのである。中日関係の著しい発展は、双方に実質的な利益をもたらし、アジアと世界の平和と発展、協力に大きく貢献した。
②新しい問題や古い問題、少なからぬ問題が土台を脅かし、人々を心配させた。
歴史問題や台湾問題など古い問題が、新たな情勢の下で再び現れてきたし、情勢の変化によって現れてきた新しい問題もある。例えば、相手が将来どのように進むかがよくわからないことを双方とも心配したり、中日両国とも民衆の間で友好感情が下降したりしている。さらには東中国海の大陸棚と経済水域の区分問題などもある。
隣り合わせに住んでいるのだから、こうした問題が出現するのはもともとおかしなことではない。もし互いに尊重し合い、大局から考えれば、解決は難しくない。たとえしばらくは解決できない問題でも、とりあえず棚上げし、長い目で考えた方がよい。しかし、両国関係の政治的基礎を脅かしたり、相手の民衆の感情を傷つけたりすることは、双方とも慎重の上にも慎重でなければならない。
③「氷を割る」のも「氷を融かす」のも、生易しいことではなかった。戦略的互恵の構築には、行動を重んじなければならない。
「三尺の氷は一日の寒さではならず」という。いわゆる「政冷経熱」の現象は不正常であり、人々の願いに沿うものでもない。昨年、日本は内閣が交替し、これを契機に、双方の努力を経て中日両国は、両国関係に影響を及ぼす政治的な障害を克服することで意見が一致し、両国関係を改善する情勢が出現した。安倍首相の「氷を割る旅」と温家宝総理の「氷を融かす旅」は、両国関係がまた新たな出発点に立ったことを示している。
双方はすでに、戦略的互恵の基本精神とその内容、協力の課題について共通認識に達したが、戦略的互恵を実現するためには、双方が政治的な相互信頼の基礎の上に、実際行動を取る必要がある。
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