本誌記者 楊 莉
6月下旬、私は「中国報道代表団」の一員として、朝日新聞や読売新聞、日本経済新聞、西日本新聞など日本の著名な新聞社を視察し、東京をはじめ京都、大阪、神戸、福岡などを訪れた。わずか10日の滞在だったが、多くのものを目にし、耳にして非常に感慨深い旅だった。
天然の酸素バー
日本の上空を飛ぶ飛行機の窓から見下ろすと、建物や道路のほか、生い茂る森林が眼下に広がっていた。
日本は山の多い国だ。国土面積の約70%を占める山地に緑の樹木が植えられ、世界でも森林被覆率が最も高い国の1つだという。今回、頻繁に利用した交通手段は中型の観光バスだった。道路を走っていると、近間や遠くの山に果てしなく広がる樹木がいつも目に止まった。折り重なるように連なり、品種も豊かで、色彩の濃淡も異なる。同行者は思わず「この一面の緑を見ていると、呼吸が楽になる。目も疲れない。まるで天然の酸素バーに身を置いているようだ」と感嘆した。
案内してくれた王さんによると、日本の山はほとんどが個人の所有で、政府は造林を重視・奨励するため、補助金を支給しているほか、低利子の融資も受けられる。日本では、天然森林の被覆率がかつて95%に達したことがある。その後、経済の高度成長に伴い、天然の植生はほとんど破壊されてしまった。いま見られるのは次生林と人工森林だ。日本は60年代から環境汚染に取り組むと同時に、森林の再生と整備を提唱、強調したことで、森林被覆率は急速に上昇し、80年代に現在の規模に達した。随所に森林や緑地があり、動物や鳥類にとって生息環境は素晴らしく、大都市でもあちこちで鳥の飛ぶ姿が目に入り、鳴き声を耳にすることができる。日本人は緑や森林に対して一種、特別な感情を抱いているようだ。都市に緑地を造り、市民は花園に住んでいる。
浸透した環境保護理念
日本は資源が極度に不足した国で、多くを輸入に依存していることはよく知れている。だからこそ、他国よりも資源の大切さを痛感しているのだろう。日本に来てそれがよく理解できた。街では、コンパクトで色彩豊かなキュートな軽自動車が数多く目に入った。気をつけて見ると、ナンバープレートの色は黄色だった。白のプレートもあり、どんな違いがあるのか、王さんに聞くと、排気量が0.66リットル 以下が軽自動車で、価格は安く、税金や保険などでも優遇されるという。この数年売れ行きは好調で、今年上半期の日本国内新車販売統計によると、ベスト10に軽自動車が6車種ランクされた。スズキの「ワゴンR」は4年連続でトップの座を占めている。また、ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車は、エネルギー消費を削減し、環境保護にも役立つ。市場に出回ってもすぐに供給不足になるという。
一部の中小都市では、一戸建ての住宅の屋根に太陽発電パネルが据え付けられていた。普及率は高い。太陽エネルギーの発電量は世界一だ。
日本は05年から夏に「クールビズ」を推進。今年で3年目になる。二酸化炭素ガス(C02)の排出量を削減し、地球の温暖化を防止するため、エアコンの温度を28℃に設定する。サラリーマンに背広を着用するのではなく、軽装で出勤してもらうというものだ。日本経済新聞社を視察すると、壁に「軽装で失礼します」と書かれたポスターが貼られていた。クールビズは効果を上げているようだ。政府の関係機関が公表したデータによると、1年目にC02の排出量は46万トン削減された。100万世帯の1カ月分の排出量に相当する。
日本ではリサイクルが生活の隅々にまで浸透している。私も再生紙で作られた名刺をよくもらった。そこには「再生紙利用」と書かれている。読売新聞社東京本部で知ったことだが、同社では新聞用紙の50%で再生紙を利用し、インクは天然の大豆を原料にしている。
環境汚染を減らすためだ。視察を終えてバスに戻るたびに、車内は非常にむし暑かった。環境保護を考慮して、待っている間はエアコンをつけられないからだ。運転手さんはいつもこのルールをしっかりと守り、私たちが戻ると冷房を入れてくれた。
目に映った日本国民
交通渋滞が深刻だといわれる東京には3日滞在した。都内を走るたびに、道路が狭く、交差点が多いからか、信号でよく待たされた。それでも、割り込む車はなく、非常に秩序だっていた。それぞれが交通ルールを守っているからだ。渋滞によるいらいらは感じなかった。
日本人は公共の場所で大声で話すことは非常に少なく、人の多い空港やレストランですら騒々しさは感じられない。商店では店員の応対が行き届いている。必要だとみれば、すぐに応対してくれるし、しつこいところは少しもない。何も買わなくても店から出る時には、「ありがとうございました」と微笑みながら声をかける。神戸のある小さな店で、旅行バッグを持ってレジに行った時のことだ。店員はまずバッグをチェック。そして底が少し汚れていますね、と教えてくれた。洗い落とせるから構いません、と言うと、店員は一割引いてくれた。思いもよらなかったことだ。
日本の建物は色がやや暗く、都市の大小を問わず、遠望すると、乱雑に見えるが、近くで見て初めて、その美を実感できる。これが一種の清潔の美なのだろう。日本人は清潔好きで、部屋のなかに限らず、家の前は草花で飾られている。遠くの街に行っても非常にきれいで、衛生的だ。
緊密化する交流
今年は中日文化スポーツ交流年に当たる。発行部数が最大の読売新聞を訪れた際、国際部の司田部長は「同社は中国に関する報道を重視している。中国経済が急速に発展しているため、中国の日系企業の状況を含め、日本は中国経済に最も関心を寄せている」と語った。朝刊の2頁が国際報道で、その3分の1が中国関係だという。来年の北京五輪開催中は、取材チームを派遣して競技だけでなく、中国社会のさまざまな面を報道する予定だ。第2の発行部数を誇る朝日新聞は、中国文物展や書道展、遣唐使の足跡など数多くの中国展を開催。日本経済新聞は「技術オンライン」という中国語サイトを開設し、毎日ニュースを十数本ずつ更新している。
街や名称旧跡ではよく中国人や中国人ツアーに出会った。中国人向け観光が開放されるにつれ、日本を観光する中国人は増えつつある。中国語の案内ブックを用意している景勝地も少なくない。九州の九十九島で遊覧船に乗ったが、船内で放送されるビデオは、中国語と日本語で解説していた。中国人観光客はぐんと親しみを感じるだろう。中国のクレジットカード「銀聯カード」が使える店もあるので、非常に便利だ。
ある戸惑い
富士山、この300年も噴火していない火山は、その秀麗な景色で日本人にとっては「聖なる山」だ。海外の観光客も必ず訪れる。意外なのは、富士山がまだ世界遺産に登録されていないこと。原因は、毎年多くの登山者が大量のゴミを投棄するため、「ゴミの山」になってしまったからだという。海外で最もマナー優れた観光客といわれる日本人が、国のシンボルでもある富士山に対して、このように無情なのはなぜだろうか。
「北京週報日本語版」2007年7月19日 |