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元駐日特派員林国本さんの眼  
朗報とそれに対する冷静な対応ぶり

                              林国本

先般、華北の渤海湾の一角で大油田が発見された、というニュースが伝えられた。石油関係の企業にとっては久方ぶりの朗報であったらしい。矢継ぎ早に次々とおこなわれた記者会見、企業トップたちの自信と喜びにみちた表情からも、これで輸入量の増加に対する国外の論評、国内における持続可能な発展の必要性に対する議論などのプレッシャーと言ってもオーバーではない状況がいくらかは緩和するのではないか、という安堵感みたいなものが感じ取れた。

だが、その後の主要メディアの対応は違ったものであった。持続可能な発展は中国が近代化を実現する過程でどうしても最重要課題だ。化石燃料が無限に存在する、という考え方はやがて、カベにぶつかり大きなしっぺ返しを受けることになろう、ということが主要な論調であった。

いわゆる「先進国」といわれる国から来た観光客が舌を巻くほどの中国のモータリゼーションの進展ぶり、大平原の広大な小麦畑を横ならびに進むコンバイン、はてはビルの前の芝生を刈り取る便利な機械。石油、ガソリンをじゃんじゃん使うライフスタイルが形成されつつある。それに加えて、まだまだ遅れている省エネ技術。やがて、中国人の所得が日本、アメリカ並みになった時には、タンカーが列をなして中国の石油バースに横づけになる日が訪れることになるのではないだろうか。人類共有の地球の資源をそういう具合に使うことは、はたして「和諧社会」を構築しようとしている中国にとって正しい選択であろうか。

近・現代の中国はアヘン戦争の敗北で悲惨な境地に置かれた教訓がある。敦煌の国宝級の文物が二足三文の値段で持ち去られ、自分たちの国の中にどこかの国の租界がつくられ、3000万人以上の人たちが殺りくされるという阿鼻叫喚の地獄絵さながらの悲劇を体験した。今や、中程度の発達国という目標を目指して奮闘、努力するマラソンレースにさしかかっている。ここで一度、いわゆる「先進諸国」がたどってきた、汚染が発生し、社会問題となってから、おっとり刀とでも言うしかないやり方でその解決に取り組むことを余儀なくされた道を冷静に振り返り、「他山の石」としてみてはどうか。実例はたくさんある。日本では、いまだに水俣病患者の認定でいろいろな取り組みが行われているではないか。ディーゼル・エンジンの排気ガスによる呼吸器官の症状についての問題なども、まださいきんニュースで取り上げられている。自宅のすぐそばを通る高速クラスの道路の渋滞を常日頃目にしながら、暮しは豊かになったが、大気汚染は楽観できないことを痛感している。これは杞憂ではないか、と思っているとき、太湖の近くにある無錫市で、太湖の水の汚染のため、住民がわれもわれもとミネラルウォーターを買いだめしているテレビの映像が飛び込んできた。今、大いにときめく長江デルタ地帯のどまんなかでのこと。実は私も昨年その付近を通って異臭に気がついていた。その時はなんとかなるのではないかと思っていた。さいきんは、中国の市クラスのトップ層の名刺を頂戴すると、役職のほかに、ほとんど、なになに修士、なになに博士ということも付記されている。こういう人たちがこの「異臭」を見のがすことはない、と思っていた。しかし、事態はかなり深刻化しているようだ。

そういうことで、たしかに経済成長のパターンを切り換えるか、調整することが必要となっているようだ。

今度の油田発見のニュースが発表された三日後に、「われわれの子孫のために、この油田は残しておいてはどうか」という意見が市民の間から出た、と聞く。もちろん、「先進国の人たちがマイカーを乗り回しているのに、中国人はマイカーを持つ必要はない、というのはいったいなんたる論点か」という人がいることも知っている。

日本に特派員として長期滞在していたとき、ある日本人家庭では、夫婦それぞれ一台ずつマイカーを持っているのを見て、中国はいつそういう時代に入るのかなあ、と思ったことがある。しかし、そのようなモータリゼーションの時代にさしかかった今日、石油価格の高騰によるマイカー族たちのイライラ、深刻な駐車場の不足、渋滞によるイライラを実感するにつれて、公共交通システムの必要性を痛感している昨今である。

近代化のペースが加速されるにつれて環境にやさしい社会、持続可能な社会、住み心地のよい環境というキーワードが耳に響いてくる。高消費、高汚染で有頂天になっていると、次の次の世代あたりになると、たいへんな重荷を抱えることになる。ころばぬ先の杖、という言葉をもう一度かみしめてみようではないか。

「北京週報日本語版」2007年6月8日

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