戦略的相互信頼を増強し、中日の戦略的互恵関係の前提を構築
2006年の中日両国間の貿易額は初めて2000億ドルの大台を突破し、2007年に中国がアメリカを超えて日本の一番目の貿易パートナーになることが望まれる見込みである。もし香港特別行政区を計算に入れれば、中日の貿易額はとっくに日米間の貿易額を上回っている。北側一雄氏が述べたように、「日中の経済発展は互いに促進し合い、どちらを離れても駄目である」。両国の経済分野での関係はウィンウィンの関係であり、「ゼロサム」関係ではない。中国が絶えず発展し、経済大国の1つになることは、日本にとってプラスとなることである。日本が「失われた10年」を抜け出し、中国にとってもプラスとなることである。経済関係の発展に伴って、絶えず両国間の相互依存を深化させることができ、必然的に両国国民の相互理解をもいっそう増進することになろう。
一般的に言って、国と国の間の経済的往来の拡大と相互依存の深化は、政治、安全分野における矛盾、摩擦と紛争を減らすか緩和させることに役立つものである。しかし、国としては政治と安全の目標をいっそう重視し、そのため、国と国の間で紛争に向かうことに対する経済における相互依存の制約作用は限りのあるものである。政治と安全面の考慮から、人々の関心を持つことは往々にして自分がいくら手に入れたかではなく、相手がいくら手に入れたかであり、相手の日増しに増強する経済力が軍事力に転化することになり、それによってみずからの安全に脅威となることを懸念することである。
そのため、ある学者が述べているように、「信頼は協力の前提条件であり、みごとに協力した所産でもある」。もし日本が平和的発展途上にある中国を脅威と見なし、中国などのアジア諸国が「普通の国」に向かい、「軍事大国」を追求する日本で軍国主義を復活させることがあり得るかどうかということに対し不安と懸念(こうした不安と懸念はさらに歴史的要因のため「誇大されている」)を感じるならば、必然的に中日両国間の相互信頼感の低下を招くことになる。そのため、いかにして両国間の信頼の欠如と「安全における苦境」を克服し、双方の戦略的相互信頼感を増強し、相互間の信頼を促進できるメカニズムを確立するかは、中日間の戦略的互恵関係を構築する前提となっている。
中日の間では1種の「信頼文化」を発展させることが必要であり、「信頼文化は他国を信頼するために十分な影響を提供することができるが、信頼しない文化は信頼しない行為を呼び起こすことになる」。いかにして相手側に対する疑いと恐れを解消し、信頼感を増加し、両国の間で「信頼によって信頼を増加する」という良性循環を形成し、「不信感が不信感を刺激する」悪循環を抜け出すかは、中日両国が直面している重要な課題となっている。この面では、両国トップの相互訪問およびトップの相互訪問に伴って展開される、訪問を前にした外交と世論上の準備、トップの訪問に同行する政治・経済など各界の人びと、トップと相手国の政界、メディア更には広範な国民との直接の対話、相手国と本国国内の世論の反応などを含む濃密な情報の交流は、必ず両国関係改善の雰囲気、両国の相互理解と信頼の増強に一般の相互訪問と接触が比べることができないような効果をもたらすことになろう。もちろん、トップの相互訪問の意義を強調することは、決して民間の往来と交流の重要性を軽視することを意味しない。1972年以降の中日国交正常化の過程から見て、ほかでもなく「民間外交」が当年の田中角栄首相の訪中と中日国交回復の達成を促したのであった。「民間外交」、民間往来と交流が今回の中日関係の「再度の正常化」において果たした役割は決して当年の「民間外交」が両国の国交正常化推進の上で果たした役割に劣るものではない。
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