京劇「レ・ミゼラブル」を演出した中国戯曲学院監督学部主任の裴福林氏は、戯曲の伝統的な上演方式を単に採用するだけでは、この劇を合理的に解釈するには十分でないため、形体や音楽の面でも、舞踏や服装などの面でも、俳優のために舞台に合った演技と同時に、京劇の上演形態に合った空間を提供する必要があると見る。
また批判的な意見で最も多いのは、衣装が中国的でもなく、西洋的でもないということだ。こうした批判に対して、服装デザイン・舞台美術学部教授の劉暁慶氏は「今回、服装では原作を尊重したうえで、西洋式の中に中国式を織り交ぜるデザインにした。教育実験的な性格のものだが、正しいかそうではないかは大きな問題ではない。内容的に成熟したものでないのは当然で、重要なのは試みることだ」と説明する。
伝統京劇には「本物の器物を舞台に置いてはならない」との古訓がある。舞台の「セット」は大体がテーブル1つに椅子2つだけだ。だが「レ・ミゼラブル」では、西洋戯曲の写実的な方法を試みようと、金属製のものを大量に用いるなど、大規模なセットを設けた。これについて、舞台美術教師の教授李威氏は「悲惨な世界の冷たさをそれとなく表すためだ。京劇の革新は伝統を継承したうえで進めるのはもちろんだが、こうした継承が革新の足かせになったり、保守的なものが京劇という芸術の様々な革新を阻むことがあったりしてもならない。そうなれば、京劇も同じように廃れていくかもしれない」と指摘する。
「北京週報日本語版」2007年3月8日
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