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元駐日特派員林国本さんの眼  
渡辺明次さんと「梁祝研究」

                                         林国本

先般、北京外国語大学北京日本学研究センターで開催された「第2回中国人の日本語作文コンクール表彰式」で特別ゲストとして紹介された、元北京外国語大学留学生渡辺明次さんは、もとは日本の高校の教諭であった。定年退職後、一念発起してというのか、それとも第二の人生の生きがいを求めてというのか、中国語の勉強のため北京外大の学生となった。中国語を勉強する中で、テキストの中の「梁山伯と祝英台」の物語にたいへん興味を覚え、いろいろと資料にあたってさらに突っ込んで調べているうちにますますそれにのめり込み、とうとうこの物語の発生地と見られる中国浙江省寧波市一帯まで足を運び、こつこつと実地調査をはじめ、とうとうその蓄積を卒論にまとめ上がけ、最優秀論文賞までもらったのである。そして、さらにロマンを追い求めつづけた。浙江省の地元の研究者たちも、最初は物好きの一外国人の年寄りの冷や水と思って対応していたらしいが、どうして、どうして、渡辺さんはそれまで集めた資料をどっさり携え、真剣になって話を聞こうとしたので、地元の関係者もそのまじめさに驚き、ますます本腰を入れて対応するようになった。

渡辺さんはその後、この物語が伝えられている周辺の省にも足を運び、石碑その他についても調査の範囲を広げ、本を三冊も書き上げた。ここまでくれば、もう専門家の領域に入ったも同じ。

この物語は近代に入ると、浙江省を中心とする地域の地方芝居――越劇のレパートリーとしても取り上げられ、さらにはバイオリン協奏曲も作曲されて、広く東南アジア諸国の華人の間にも伝わった。  

私事で恐縮であるが、私の父も浙江省出身で幼い頃から、我が家でこの物語を何度も聞かされたことを今でも覚えている。英語をいくらかかじったことのある私は、ロミオとジュリエットのストーリーに似た物語だとも思った。その後、ジャーナリストとして父の郷里付近に取材に行った時にも、単なるエンターテインメントとしてこの物語の芝居を観賞していた。

今回、渡辺さんのような一老留学生がそれこそ自腹、手弁当(古い表現であるが)にひとしい状況のもので、これだけのことをやりとげたことを知って、非常に感動した。会場でいただいた三冊の本に目を通して、一冊ごとに学問書のレベルに近づいていることを感じた。中国と日本の文化交流のユニークな成果として日本のみなさんにぜひ知っていただきたいと思い、古巣である北京週報のネット版の日本語版のために拙文をしたためた。渡辺さんがさらに深く掘り下げた研究を続けられることを心から願っている。

「北京週報日本語版」2006年12月4日

 

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