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雲の上の中国少数民族 チャン族  
見張り櫓がそびえ立つ 桃坪寨の暮らし

 

劉世昭=文・写真
 
  チャン族の桃坪寨に入ると、その8つの門と31の通路が、まるで迷宮のよう……

二つの櫓を有するチャン族の桃坪寨

 約2000年前の前漢時代(紀元前206~紀元25年)に建築され始めた桃坪寨は、四川省アバ・チベット族チャン族自治州理県の東約40キロのザグノ河のほとりにある。しばしば戦火や地震などの災害にさらされたが、現在でも依然として原始的な風貌の残る、中国唯一の完全に保存されている古代チャン族の村である。

露台になっている民家の屋上。村人はここに穀物などの農産物を干している

 竜小瓊という村の娘さんの案内で桃坪寨に入った。いたるところで、チャン族の民族衣装をまとった村人の姿を目にすることができる。竜さんがこう教えてくれた。

 「チャン族の娘なら、誰でもチャン族刺繍の技術を持っています。そうでないと、男性から見くびられてしまいます。嫁に行くとき、娘たちは必ず美しい花嫁衣裳を数着刺繍し、『雲雲鞋』と靴の中敷きを作ります」(「雲雲鞋」とは娘が恋人に送る手作りの布靴。靴の表面には、ロマンチックな意味を込めた雲の模様の刺繍が施されている)。

まるで斬壕のような村内の道

 チャン族の刺繍は、クロスステッチ、刺し子縫い、うずまき状の刺繍などの手法に分けられ、チャン族女性の賢さと知恵を示している。またこの技術は次第に民間の工芸美術専門家の注目するところとなっている。街頭や民家の出入り口などでは、刺繍する女性の姿はそこかしこに見ることができる。

 桃坪寨の建築はすべて石で築かれたものであり、家々は隣接している。それぞれの家をつなぐ道は、伸ばした手の先も見えないほど暗い地下道のようであったり、迫り来る峡谷の底のようであったりする。中に入ると、曲がりくねった小道を静かな奥深いところへと歩いていくように感じることもあれば、迷宮に迷いこんでしまったような当惑を覚えることもある。

天井から櫓を仰ぎ見る

 竜さんは「桃坪寨の家々のつながりや家々が隣接する配置は、戦争経験の産物であり、チャン族の知恵の結晶でもあるのです」と語る。村の民家は「荘房」と呼ばれる。またチャン族が「キョウ籠」と称する櫓は、その機能によって見張りのための警戒用櫓と戦いのための戦闘用櫓とに分けられる。「荘房」と櫓とは一体化しており、たとえ敵が入りこんだとしても、村全体が侵入者の肝をつぶすような戦闘砦になったのである。

 竜さんが、自分の家に案内してくれた。5階建ての「荘房」に、家族4世代が住んでいる。チャン族の民家は、ふつう5階建てである。1階で家畜を養い、2階に囲炉裏と居室を置き、3階と4階はそれぞれベーコンや穀物を貯蔵するのに使用する。5階は露台で、祭祀台として白い石を祀っている。

村人の家に掛けられている、門を開けるための木製の鍵
民家の石壁に施された「卍」の模様
民家の門の上に施された石づくりの装飾

 チャン族は、「万物に悉く霊が宿る」という多神教を信仰している。村内の所々に神を体現する白い石が置かれているが、それぞれが、天神、地神、山神および関帝聖君(三国時代の武将関羽をさす)などの諸神を意味している。アバ・チベット族チャン族自治州の他の県には、白い石を祖先として祀っているチベット族の村もある。

誰もがチャン族刺繍のすばらしい技術を持っている村の女性たち

 竜さんの家の門のそばに、約30センチ四方の穴を見かけた。不思議に思って聞いてみると、民家の門を開けるためのものだと分かった。鍵そのものは木製で、長さ約40センチ、幅7、8センチのものである。上部に、2、3個の木の釘がついていて、門を開けるときは鍵を持った手を穴に入れて、内側から木製の錠前を開ける。それぞれの鍵は釘の位置が違っており、異なる錠前を開けるのに使い分けられるようになっている。

 桃坪寨の建築の中でも、もっともすばらしいものとして地下水路を挙げなければならないだろう。黒石板で築かれた暗渠がクモの巣のように村の隅々まで分布している。澄み切った山の泉が暗渠を通じて、各家まで流れ込み、人々はわざわざ外へ出ることなく家にいながらにして利用することができるのである。

 万が一戦争が起こっても、流れの絶えることのない泉があれば、侵入した敵と持久戦を続けることができる。火災が起こっても、その場で水を汲み、火を消すことができる。古代チャン族の人々は、独自の知恵を働かせ、こうした給水システムを作り出したのである。

多くの民家の前に掛けられている紐でつなげられた豚の肩胛骨は、その家の主人の生活の豊かさを象徴している

 櫓の背後の壁は平らではなく、上から見ると内側へ凹んだ二つの弧線が並んでいるような形になっている。この建築様式は、力学の原理を巧みに利用したもので、建物の各階に均衡に力がかかるようにすることによって、櫓の美観を強調しつつ、櫓をさらに堅固なものにしている。

 狭い木製の階段に沿って、櫓の頂に登った。閉ざされた建物の中のすべての壁に、2、30センチ四方の通気窓がある。普段は通気用であるが、戦時には射撃口として使われた。

 近づいてみると、勇ましい強固な面持ちの櫓と荘房は、優しい顔も持っていることがわかる。多くの石壁に、平べったい石で築いたまざまなデザイン、装飾が施され、古代チャン族の美に対する追求と信仰が現れている。

 昼食の時間になった。竜さんは、彼女のいうところの「街では買えない、食べられない」チャン族料理、ベーコン、香ばしい豚のもも肉、蕨…などをごちそうしてくれた。

「人民中国」より

 

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