最近、北京が2009年末から死刑囚に対し、全面的に薬殺刑を実施することが内外から注目されている。私は、これは中国が最終的に死刑を廃止する方向に向かっていることと一致していると見ている。
中国政府はかねてから、長い目で見れば、中国は最終的に死刑を廃止することになるが、現在は条件がまだ備わっていないと指摘してきた。1996年に改正後の「刑事訴訟法」に、死刑囚に薬殺刑を採用する内容が加わったが、この立法の背景としては、1984年に国連経済社会理事会で採択された「死刑に直面する者の権利の保護の保障に関する決議」で、死刑制度の存続国は死刑を執行する場合「できるだけ痛みを軽減する方法で執行すべきだ」と要求されていることがある。検討を経て、薬殺刑は銃殺刑より死刑囚の痛みを軽減し、死刑囚の死体を完全な状態で保ち、銃殺による脳漿破裂といった残忍な場面を避けることができる、と立法者は考えたのだ。
死刑執行方法の変革は他と切り離された単独の事柄ではない。これは刑罰と刑罰執行の人道化を具現するものである。今、薬殺刑による死刑執行は専門の場所で行われ、これは死刑に対する社会の依存度を徐々になくしていくことに役立っている。
薬殺刑がなぜ銃殺刑に取って代わりつつあるのかは、中国で死刑執行が大幅に減っていることにかかわっている。中国は2007年1月1日から死刑審査・承認権を最高人民法院に戻した。これを契機に中国の死刑の判決と執行は急激に減ってきた。2007年、最高人民法院が審査した死刑事件のうち、15%が否決され、その上全国では死刑執行猶予と判決された人数が数年来初めて死刑と判決された人数を上回った。死刑が減る情況の下で、2007年度の爆発、殺人、放火など悪質な事件の犯罪率はかえって2006年に比べて顕著に下がった。これは死刑に過度に依存しなくても社会治安をうまく管理できることを示すものである。
(作者は中国社会科学院法学所の劉仁文研究員)
「北京週報日本語版」2010年1月14日 |