本誌記者　金多優

 重慶海外旅遊公司欧洲部の袁世云経理

　一般に、重慶観光と言えばすぐに思い起こすのが、長江山峡や大足石刻、鳥江画廊、武陵の風景といった有名な景勝地だ。今日、旅行者はいとも簡単にこうした巴蜀（四川省）の地にある秀麗な山水に赴くことができるが、７、80年代は、交通がこの「山の城」と呼ばれる都市には観光業を発展させる上で一大ネックとなっていた。

「当時、旅行者は非常に大勢いましたが、重慶観光のインフラはほとんど整備されておらず、質の高い旅行社も限られていました」。重慶海外旅遊公司欧洲部の袁世云経理はこう振り返る。45歳の袁氏は上海外語学院（現在の上海外国語大学）ドイツ語学科を卒業後、1986年から同公司に勤務している。

「交通は観光の発展にとって主要な問題であり、旅行者が行くことができなければ、発展の見通しは開けません」。観光業に従事して20年余り、袁氏は、最も感慨深いのは重慶の観光インフラが改善されたことだ、と話す。「従来、重慶から大足石刻まで、170キロ行くのに５時間かかっていましたが、96年に成都と重慶を結ぶ高速道路が開通してからは、２時間で行けるようになりました。日帰りが可能となり、観光の効率がアップしただけでなく、コストも削減されました」

　遊覧船は長江山峡になくてはならない手段。だが80年代、重慶では遊覧船がかなり不足していた。袁氏によれば、当時、遊覧専用の船はなく、旅客輸送船しかなかった。重慶を訪れた内外の観光客は地元住民と同じ船に乗らなければならず、船上の設備は非常に劣悪だった。

「輸送船ではまったく間に合わず、しかも臨時の船をどこから調達し、観光用に仕立てたらいいのか、困った時がありました。でも今では状況はすっかり異なり、旅行者はいろいろと選択することができます。観光シーズンには豪華客船は４、50隻を超え、旅客輸送量は、昔は100人前後でしたが、現在は300人以上に達しています。船上ではいろいろなイベントが催されていますが、昔は考えられなかったことです」。袁氏は感慨する。

　同じように袁氏が思いを深くするのが、ホテルの施設。「86年のころ、重慶で外国人旅行者を受け入れられるのは、重慶飯店、人民賓館、渝州賓館など、数件の国有ホテルだけ。今の標準から言えば、いずれも三つ星に過ぎませんでした」

　重慶のホテルが国際化されたのは、89年から。この年、初の外国人向けホテル・楊子江假日酒店がオープンした。外国協力企業国際ホテル管理グループにより成熟した管理システムやサービス基準が導入され、ホテルとしてかなりレベルアップした。

「当時、楊子江假日酒店のスタンダードルームの料金は１日70ドル。外国人にとって比較的高い値段でしたが、それでも需要に追いつかず、予約はなかなか取れない状況でした。だが今は違います。五つ星ホテルはどこにもありますし、外国人を受け入れるホテルは少なくとも四つ星が必要です。居住条件はまさに今昔の感があります」

　袁氏によれば、重慶市は89年に観光事業管理局を正式に設立、これを契機に観光業は一つの産業として発展し、97年までに急成長を遂げた。統計によれば、その年に重慶に訪れた観光客は89年に比べ5.1倍と、初めて延べ20万人を突破。国内観光客数は89年の4.7倍の1850万人、観光総収入は同164.5倍の73億4000万元に達した。

　97年は3000年余りの歴史を有する「山の城」にとって記念すべき年となった。３月14日、第８期全国人民代表大会は重慶を直轄市にすることを決定した。

　この中国で最も若い直轄市の第一期政府は即刻、観光業の育成と発展を重慶の新たな基幹産業に据えるとする、影響力の大きな政策を決定した。「これが重慶の観光業発展にとって重要な契機となりました」。重慶市旅遊局の王愛祖局長は感慨深けに話す。

　この年、重慶は観光産業指導小グループを設立し、「重慶市観光管理条例」を制定。市共産党委員会と政府はその年、50億元の予算のうち観光業発展基金に3000万元を計上した。王愛祖局長は「これを機に重慶の観光業は急速に発展していきました」と強調する。

97年から08年までの11年の間に、力を蓄えてきた観光業は飛躍的な発展を遂げました。今では様々なツアーが開設されています。王局長は「観光業は重慶にとって経済成長、消費を促進する新たなスポットになる」と強調する。

参考資料

　重慶は「渝」と略称されている。青海・チベット高原から長江の中下流平原に至る地帯、また長江と嘉陵江がクロスする地帯に位置し、域内は河川が縦横に走り、山々が連なる。世界的に有名な長江山峡、瞿塘峡、巫峡、西陵峡もここに位置する。