兵馬俑一号坑の第3次発掘
始皇帝の軍隊を美しく
許衛紅さんが隊長を務める現在の考古学チームと、30数年前の「兵马俑の父」と呼ばれる袁仲氏が率いたチームを比較すると、今日の発掘技術や文化財保護能力は質の面で飛躍的に向上。出土する兵马俑について、人々が関心を寄せる焦点は次第に「何を発掘するか」から、今は「出土品をいかに保護する」かに変わりつつある。
考古チームは75年に密封法を採用し、化学薬剤で彩色俑の色の塊を覆うことで、脱落を防止することに。だが、保護された色の塊の表面は光を発しても、従来の光沢度に変化が生じてしまった。80年代に入ると、針管を通して凝固剤を生漆と俑身の間に注入することで、脱落を防ぐ試みがなされた。現在では、電子ビーム照射による陶俑の彩色絵の固定化が最先端の文化財保護技術となっている。
「彩色俑を発見した場合には、発掘した時にその上に薄く土壌を残すようにして、それから綿棒で手術をするように薄い粘土層をそり落としていきます。そして、保湿・強固にする作業を進めていきます」
「私は陶俑に美容を施していると思っています。チームには女性が比較的多く、彼女たちは女性特有の忍耐強さときめ細かさを発揮して毎日、素晴らしい仕事をしています。男性は女性軍の党の代表です」。許さんは男性チームのベテランの邵文斌さんを指差してこう話した。
30年前の初の発掘時には、考古学者や軍隊など多方面の人材を活用し、79年の開館前に任務を必ず達成するため、一号坑の陶俑層を発掘するなど厳格な考古作業を行った。スピードを求めれば当然、多くの細かな部分で不足な面が出てきたため、多くの陶俑層上の歴史的痕跡が無視されてしまったという。
「今回の発掘作業では、チームには文化財保護専門の隊員がいて、出土文化財の保護の責任を負っています」。許さんのチームには考古学隊員が4人、文化財保護隊員が4人、さらに技術者が8人おり、そのうち3人が一号坑の第1回発掘に参加するなど、経験は豊かだ。充足した時間と人力により、細部でより適切な処理が出来るようになった。
許さんは「兵器の取っ手には、麻糸の類のものがからまっている場合があり、もし以前なら、その事実を記録するにとどまり、細かに研究する力はなかったでしょう。今では、麻糸の数量、様式を通して秦代の紡績業、手工業の状況をゆっくり分析できるようになりました」説明する。
膨大な兵马俑の金の矛、鉄の馬の中に身を置きながら、許さんはいつの日か、復元された「秦皇大軍」が当時の陣形に沿って再現されることを夢見ている。
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