忘れがたい体験

「アモイの変化は非常に大きく、数十年前と比較するとまさに天地の違いがあります」。アモイの発展と変化に、江氏は感慨を深くする。さらに最も忘れがたい記憶を語ってくれた。

「私自身は測量の仕事に携わっていましたから、ある程度、アモイの都市建設にも参与しました。なかでも印象が最も深かったのが湖里区です。当時、そこに弾薬庫がありました。仕事の必要からよく足を運びましたが、そこの環境には本当に耐えられませでした。無数の蚊が飛び交い、食事をするにも蚊帳のなかでした。すでに、弾薬庫はなくなり、跡地には５つ星ホテルの悦華ホテルが建っています。こうした変化は実に感激させられます。現在、その場所を通るたびに、あの弾薬庫を思い出し、あのころの永遠に忘れがたい体験を思い起こします」

「さらにもう１つ、60年代末の胡里山気象台の建設ですが、私も要請されて立地作業に参与しました。７月だったと覚えていますが、マツの木は毛虫だらけで、あちこちに落ちていました。山の上は蚊の一群で真っ黒、実に凶暴で、袖口から入ってくるのです。駆除油など役に立ちません。ここは今、公園になっています。念入りな計画がなされたことで、環境は非常に素晴らしいです」

「今住んでいる文灶村は以前、町と村の境界でした。当時の文灶は非常に荒涼としていて、一面畑地でした。非常に面白いことがあります。老いた馬は道をよく知っているとみな言っていましたが、実際、老いた牛もよく知っていました」。ここまで話すと、江氏は笑い出した。「あのころ毎日、畑にまくため町に糞を集めにくる農民がいました。夜に家を出て、牛車で眠っている間、牛は道をよく知っているので、ゆっくりと、ゆったりと一夜を歩き通し、翌日の朝に町にやって来ました」

「当時の厦禾路は起点から終点まで泥水だらけの道でした。後に中間部分がアスファルトになりました。道路は狭く、車道は２つありましたが、その両側は土の道。牛車はこの土道を通って町にやって来るのです」

日進月歩の生活

「昔は非常に苦しく、今のように豊かでも、多彩でもなかった」。江氏は振り返る。「幼いころから大人になっても、新しい靴を履いたことはありません。裸足か、でなければ兄のお下がりでした」

江氏は「若い時は仕事のためにあちこちを駆け巡り、退職してもやはりゆっくりしてはいられません。以前は地球儀を背負っていましたが、現在はカメラに代わりました」と笑った。江氏の生活は非常に充実している。書法に海外、篆刻、写真と、いずれも水準は高い。だが、最も絶賛させられるのは、パソコンを自在に操ることだ。白髪の老人が、ソフト合成写真を見ながら毎日、ブログを更新しているネットの名手だとは想像すらしなかった。

「よい物はみんなで共有すべきです。ですから、素晴らしい写真をネットに発信することにしたのです」。江氏はブログを開設した経緯をこう説明した。豊富な内容、文章の併記。そのブログは多くのネット利用者の関心を集め、高く評価されている。まさに「ブログのスター」だ。

　ブログに触れた際、江老人は特に珍しい体験について語ってくれた。「米国のネットで私のブログにある文灶村に関する歴史資料を閲覧した人がいます。台湾出身の黄氏は、米国から香港へと飛び、さらにアモイを訪れ、あちこち聞き回って私を探し当て、文灶にいる同郷人を探すのを手伝ってほしい、と依頼されました。いろいろ曲折を経て、最終的に文灶にある古い碑文に、黄氏の父の名前を見つけたのです」