今年五十八歳の趙さんには、息子三人と娘三人がおり、みな公司で働いている。二十四歳の一番下の息子のほかはみな結婚し、自立している。ここ数年、カネがたまったので、趙さんとその子どもたちは、村の圧倒的多数の人びとと同じように、新築のれんが造りの家に住み、テレビ、洗濯機、扇風機などを買いそろえている。

「いまの暮らしは快適そのものです。野菜をうまく栽培することだけを考えておればいいのですから」と趙さんは語る。そのため、小学校三年までしかいかなかった趙さんも、野菜栽培についての技術書を読み、自分を高めようと努力している。趙さんのグループのあるメンバーの話では、趙さんは野菜作りにかけては少しも保守的なところはなく、ここ数年、南方の苦瓜、アメリカのセロリーを導入し、日本から輸入した農薬も使用している。しかし、計算がこまかく、自家肥料の使用を基本とし、化学肥料はほとんど使わない。

趙さんによれば、これだけで、毎年二万元の元手を節約できるという。

趙さんは中肉中背だが、日に焼けて血色はよい。顔にはしわが多いが、目はきらきらと輝き、あり余る精力をもてあましている感じだ。

趙さんは「よそから、あるいは外国からも多くの品種を導入し、また、ビニール栽培技術を採用しているため、ここ数年、北京市街区に野菜が豊富に出回るようになりました。これまで、冬の野菜市場には白菜、大根、ポテトなどしかなかったが、今は、各種の夏野菜が冬の野菜市場にいっぱい陳列されています」と語る。

「野菜栽培のほかに、収入がありますか」

「グループの仕事だけで手いっぱいで、ほかのことをやる時間なんかありません。いまは昔と違って、請負グループの仕事さえよくやれば、快適な生活ができます」

趙さんは手の中の茶わんをゆすり、タバコを一服吸って話をつづける。「現在、私は毎日ビールを二本飲み、タバコを一箱吸い、食事のたびに、いため料理をたべています。昔、こんなことが想像できたでしょうか」

趙さんは記者に身の上話を始めた。一九四九年の北京解放前、趙家は劉という地主から一•三ヘクタールの山の斜面の畑を借りていた。収穫は天候次第だった。毎年の収穫はわずか千キロ余りの食糧で、その半分を地主に渡さなければならなかった。趙さんは十五歳のときから、二人の兄について、農閑期には京西炭鉱に行って石炭を背負い、お金をかせいだ。毎日の食事はトウモロコシの粉、干した白菜、ぬかだった。だから、いつもおなかをすかしていた。解放後、趙家は○•六七ヘクタールの土地と三部屋の土造りの家を分配され、腹いっぱいたべられるようになった。一九五五年、趙家は自発的に生産協同組合に加入した。組合員が共同で井戸を掘り、田に水を送り、暮らしは目に見えてよくなった。一九五八年、人民公社が設立され、生産隊および組合員の一部の財産は無償で公社の所有に移され、貧富がならされ、均等に分配するようになり、皆の生産意欲はくじかれた。一九六六から七六年までの「十年の動乱」中、人びとは身動きもできないほど縛られ、すこしばかりの草を刈り、数羽の鶏を飼って売ることすら、みな「資本主義のしっぽ」と言われ、批判された。

趙さんは感慨深げに、「あの数年は本当につらかった」と語った。

趙さんは、現在の農業生産請負責任制は社会主義集団経済の優越性を発揮しているとみている。「大なべの飯」は打ち破られ、労働に応じた分配の原則が実行されているため、農民はやる気十分である。収入の絶え間ない増加が保証されているだけでなく、貧富の差が開きすぎることもない。

「単独経営はやるべきでない。もし私が単独経営をやれば、集団の保障がなくなる。現在、公司は種子、化学肥料、農薬、農業用ビニールなどの物資を供給してくれるだけでなく、収穫の季節になれば、トラックを出し、われわれの野菜を無料で市内に運んでくれます。ひどい自然災害に遭ったら、それに見合った補助金を出してくれます」

鄧懐慶さんによれば、公司の理髪室、浴室は従業員に無料で開放され、托児所も名目的な食費を徴集するだけ。従業員の病気治療も、七〇％は公費だし、定年退職（男六十五歳、女六十歳）後は毎月数十元の養老年金がもらえる。

趙さん自身は、六十五歳の定年退職までに、五万元以上を積み立て、老夫婦で晩年を安楽に過ごそうと計画している。

「北京週報日本語版」2009年9月17日