故宮は、「紫禁城」ともいわれ、明・清時代の古い宮城ゆえに故宮と呼ばれ、約490年間、24人の皇帝の居城となった。故宮は1961年に中華人民共和国国務院によって全国初の「重点文物保護単位」の一つとなった、更に、1987年ユネスコの世界遺産に指定された。
故宮は、南京から北京に遷都した明の成祖永楽帝が、1420年(永楽18年)に元の宮城跡に竣工したもので、明末に大破壊をこうむったあと、清がほとんどその規模を受けついで復興し今日に至っている。
故宮は南北960メートル、東西760メートル(約72万平方メートル、東京の皇居は約22万平方メートル)で、高さ10メートルの厚い城壁に囲まれ、四面に各1門、四隅に角楼を設け、その外に幅50メートル余の堀をめぐらしている。この中に9000近くの部屋があり、明代では9000人の宮女、宦官10万人が住んでいたといわれる。
故宮の四面に城門があり、南の午門は現在、参観者の入り口であり、北の神武門は出口となっている。故宮には、南北に通る中軸線に沿って宮殿建築が配置され、左右対称につくられている。赤い壁に黄釉の瓦をいただき、柱や梁の表面は文様や彫刻で埋められ、きらびやかである。数多くの宮殿や楼閣からなる建築群は、壮麗で、雄偉である。朝日と夕暮れの中の故宮は幻想世界のようで、ひときわ美しい。
故宮は前朝と後寝のニつの部分に分かれる。前朝は太和殿、中和殿、保和殿を中心とし、左右に文華殿、武英殿を配している。ここは皇帝が国家の行事を行ない、政治活動をする場所である。後寝は乾清宮、交泰殿、坤寧宮、東西六宮、御花園を中心とし、東側に奉先殿、皇極殿、西側に養心殿、雨花閣、慈寧宮などを配している。ここは皇帝と后妃たちが居住し、宗教活動を行ない、日常の政務を取り扱う場所である。建築面積が延ベ16万3千平方メートルに達する宮殿建築群はうまく配置され、整然としている。その一つ一つの建物は封建的礼制によって建てられ、封建帝王の最高至上の権威を現わすものである。このため昔は、民衆が紫禁城(故宮)に近づくことは許されなかった。
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