2007年8月31日、劉翔は、日本の大阪で開かれた第11回世界陸上の男子110メートルハードルで優勝した。すべてのカメラが劉翔に照準を合わせていたとき、彼の傍らで明るく笑っている中国の選手がいた。それが史冬鵬である。今しがた終わった競技では、史冬鵬は第5位だったが、自己新記録の13秒19で走ったのだった。
劉翔より半年若い史冬鵬も、世界の110メートルハードルのトップクラスのランナーである。「史冬鵬はめぐり合わせが悪かった」と言う人もいる。なぜなら、すべての成績が劉翔の輝きで覆われてしまったからだ。こんな「不幸」に対しても、誠実で素朴な史冬鵬は、面白くないとは思っていない。「劉翔は、私の崇拝するヒーローです。もし劉翔がいなければ、私はせいぜいアジアのナンバーワンくらいにしかなれなかったでしょう。劉翔が中国のため、またアジアのために勝ち取った栄誉を、私はまだ成し遂げていません」と史冬鵬は言う。
いつも劉翔といっしょにいられることに、史冬鵬は幸せを感じている。彼の目からみれば、劉翔はライバルでもあり、友でもある。史冬鵬は歌を聞くのが好きで、劉翔は彼のためだけに歌う。「劉翔の歌はとてもうまい。私は彼の歌の大ファンです」と史冬鵬は言う。劉翔とビリヤードをするのも好きだ。この時だけ、史冬鵬は自分のヒーローに勝つチャンスがある。
史冬鵬の実家は河北省保定市で、北京からそう遠くない。彼の両親は北京オリンピックの時には、現場で息子のレースを観戦するつもりだ。史冬鵬のコーチは「北京オリンピックで史冬鵬が劉翔に勝つ可能性も排除できない」と言っている。このために史冬鵬は、引き続き努力している。