◇「ミニコンサート」でも大きな意義◇
40分間ほどの公演の後、来場者と一緒に合唱し会場は熱気に包まれた。公演に続いて、会場にいた人たちと交流会になった。
南京大虐殺記念館の広い会場をびっしり埋めた9000人の参加者
参加した学生の1人は、「初めて紫金草合唱団の歌を聞きましたが、とても感動しました。このような交流がもっと広まることを望みます。私たちの世代は戦争の経験はありませんが、みなさんと一緒に平和に向かって貢献したい。」と感謝していた。会場の市民からは「(平和を求めている)歌詞がとてもよかった。抗日戦争に参加した父に聞かせてあげたかった。」と言葉を詰まらせていた。
団員からは「このように心のこもったコンサートが出来てとても嬉しい。少ない人数でも来て本当によかった。みなさんありがとうございました。」と開催してくれた関係者や来場者に感謝していた。
コンサートは終始和やかな雰囲気の中で進められ、「海はふるさと」などの曲を一緒に歌った後は、感激して抱き合ったりする人もいた。国同士が緊張状態にあっても、一般の人たちはお互いに相手と友好的に交流を続け、平和を求めていけることを確認した。小さなコンサートではあっても、大きな意義のある交流になった。
◇日中の合唱団が見事なハーモニー◇
翌日の13日、「南京大虐殺記念館」で開かれた75周年追悼式典で紫金草合唱団は、地元の江蘇省ラジオ局合唱団85人と一緒に正面左側の舞台で「平和の花紫金草」「譲世界充満愛」(地球を愛で包もう)など日中両国の平和の歌を合唱し、見事なハーモニーを響かせていた。
紫金草合唱団のメンバーは東京都を始め、大阪、広島、奈良、金沢、神奈川、埼玉など全国から参加した。それぞれの地域では練習をしているが、訪中団の合同練習は1、2回程度だという。江蘇省ラジオ局合唱団との練習もぶっつけ本番同様だった。しかし、歌声はスピーカーを通して約9000人が集まった会場一杯に響いていた。会場には小中学生や江蘇省、南京市政府関係者、南京事件からの生存者、犠牲となった遺族関係者などが集まり、じっと歌声に聞き入っていた。翌日ネットで見た限りでは、紫金草合唱団のことについて触れた日本の報道メディアはなかった。
会場の参加人数は2006年までは3000人規模で開催した。記念館の敷地面積を従来の3倍あまりに拡大した2007年には8000人となったが、その後は5000人規模だった。今年は初めて9000人と昨年の2倍近い参加人数になった。それに反して、今年の日本人の参加者は紫金草合唱団を含め、僧職関係者や日中友好協会、JR東日本労組など70程度で、これまでは数100人が参加していたのを大きく下回った。日中関係の緊張状態を反映した影響かもしれないが、それだけに紫金草合唱団の心意気が光る参加が貴重な存在になっていた。
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