「笑顔+挨拶+ありがとう」は魔法
レベルの高いコーチとして井村氏は、中国シンクロの欠点は力、スピード、動きの幅などの不足にある、とずばり指摘した。このため、井村氏は日本から専門的な筋力トレーニングコーチを招き、中国代表の筋力を強める訓練を行い、一人一人の体重を5キロ増やすことを求めた。
2007年3月、井村氏は初めて「CHINA」と書かれた服を着てメルボルンで行われた世界選手権の競技場に登場した。中国に来て3ヶ月が経ち、世界選手権に参加したことについて、井村氏は「2006年末に中国代表コーチになった後、中国選手の筋肉がとても弱いことを発見し、音楽と合わせて練習し始めたところ、すぐに選手たちは体のあちこちが痛いと言った。筋肉がなくては、練習のしようもなかった。わずか3ヶ月で基本強化を諦め、表面的な技を練習することに決めた。まず、『笑顔と挨拶とありがとう』という3つのことを勉強した。『ありがとう』は魔法の言葉であり、この言葉を聞いて怒る人はいない。英語がうまく話せなくても構わない。今、世界中の人々が中国語を学んでいるので、直接『你好(ニイハオ)』と言えばいい。中国チームを更に美しく飾り直し、活力と生気にあふれて、試合前に勢いのあるチームにしなければならず、世界選手権でメダルを取りそうなチームだという印象を人々に与えることを目指した」と述べた。井村氏の指導の下、世界選手権では中国代表はこの魔法のコンビネーションをうまく使い、シンクロのデュエットとチームで自己記録を更新し、両方とも第4位を獲得した。
中国の選手は日本の選手よりガンバリやさん
中国の選手と日本の選手の相違点について、井村氏は、「私が教えていた中国の選手は日本の選手とは非常に異なっていると思う。中国の選手たちは簡単には諦めず、コーチの要求に応えられず、厳しい批判を受けても、涙を流しながら練習をとことんまで続ける。日本の選手だったら練習をやめてしまうかもしれない。中国の選手は各省を代表する希望の星であり、出身省の期待を背負っている。諦めることは彼女たちの選択肢にはない。それに比べ、日本の若者は簡単に諦める人が多く、自分には限界だと言った教え子もいる。私は日中両国の選手に同じことを要求している。それは勇気をもって自分を変えることだ」と語った。
そして、井村氏が何度も強調したのは、結果こそ最も重要だということだ。同氏は、「私は結果に価値があり、過程には価値がないと思う。努力して素晴らしい結果が出せたときに過程を振り返ってこそ、過程も美しく輝く。良い結果を得るためには、まず目標をもたなければならない。大きい目標と小さい目標だ。大きい目標とはオリンピックのメダルであり、小さい目標とは毎日実現でき、自信を強められるような目標だ。私はその小さい目標を“1mmの努力”と言う。飛び込みを例にすれば、毎日1mmずつ多く飛べれば、100日後には10cmになる」と述べた。
北京五輪では、井村氏と中国選手の夢は花が開くように、夢に満ちた北京国家水泳センター「水立方」で実現した。講演会の最後に井村氏は、「北京五輪のシンクロ女子チームの決勝で中国代表チームが銅メダルを獲得した後、私は日本のメディア、スポーツファンを含め、各分野から好評と賞賛を受けた。こうした態度の変化は、私が中国代表チームでコーチを務めて得たことの中で最大の安堵であり喜びだ。私のコーチを通じて、日本人に中国のスポーツを理解してもらい、日に日に変化する新しい偉大な隣国を理解してもらった」と述べた。そして、同氏は、「今後、中国とのシンクロ交流に尽力し、中国と日本が共に世界の最も素晴らしいシンクロチームになるよう引き続き努力する」と表明した。現在、井村氏は日本のチームには籍をおかず、郷里の大阪で自分のシンクロクラブを運営している。
「北京週報日本語版」2009年3月6日
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