本誌記者 繆暁陽
日本に、日本僑報社という中国系の出版社がある。同社は12年間にわたって、毎年分厚い反戦本を出版してきた。そこには、中国を侵略した元日本兵の証言が数多く記録されている。次々とこの世を去っていく元日本兵の証言を世に出す目的はただ1つ。日本軍国主義の中国侵略の記録を次の世代に残し、幾世代にもわたる中日友好を促進することである。
8月26日、第22回北京国際図書博覧会で、日本僑報社が出版した反戦本を紹介する段躍中・日本僑報社編集長。(繆暁陽 撮影)
中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念日を前に、日本僑報社は21冊目の反戦本『2014年の8.15』を出版した。本誌記者は同社が日本軍の中国侵略の証言を記録し出版するにあたっての思いについて、同社の創業者であり編集長である段躍中氏を取材した。
歴史の真相を後世に伝える
日本僑報社は1996年に創立され、中国を紹介する日本語書籍を日本で出版している。2015年8月現在、同社が出版した書籍は中国社会、経済、文化、中日交流関係など約290冊、発行数は累計100万冊に上る。
日本僑報社が出版したシリーズ反戦本(段躍中提供)
段躍中氏によると、日本僑報社は2000年から、毎年7月7日か8月15日に反戦本を1~2冊発行しており、今までに計21冊を出版した。これまでに出版した反戦本には、『私が出会った日本兵』、『つくる会の歴史教科書を斬る』、『沈黙の語りべ』、『鬼子又来了(「鬼子」がまたやって来た)』、『尊厳-半世紀を歩いた「花岡事件」』、『偽満州国に日本侵略の跡を訪ねる』など書籍9冊と、シリーズ書『8.15』12冊があり、いずれも中日両国で反響を呼んだ。
「最初は私たちもシリーズ形式で反戦本を出版するとは思っていなかった。1冊目は2000年。中国人作家の方軍氏が書いた『私が出会った日本兵』だった。翻訳版を出版すると、日本で大変注目され、多くの日本メディアに報道された。この時から、反戦本を出していけるのではないかと思うようになった」と段躍中氏は話す。
2003年、僑報社は元日本兵の山東省への謝罪の旅を記録した『鬼子又来了』を出版した。同書の著者である塩谷保芳氏は1942年に軍隊に入り、中国の山東省で八路軍と何度も戦い、戦後シベリアに抑留された後、東京に戻った。塩谷氏は同書で、「戦争中にした悪事を忘れたことはなかった」と書いている。1985年、塩谷氏は戦友約90人とともに、謝罪を目的として中国を訪問。その後5年間かけて、かつて中国で自分が戦った戦場を再び訪ね、付近の小中学校に文具など学習用品を寄付した。
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