梅新育(商務部国際貿易経済合作研究院研究員)
2013年5月、復星国際とフランス・アクサプライベートエクイティがクラブメッドの20%株式を共同保有する主要株主として、クラブメッド管理層と共同で最初に TOB(株式公開買付)を仕掛けた際、価格は当時の株価よりずっと高い1株当たり17ユーロだった。幾度かの交渉の結果、最終買収価格は 1株当たり24.6ユーロ、総額は9億3900万ユーロにものぼり、2013年6月初めの最初の提示価格を45%も上回った。中化集団のピレリ買収成約価格の株価収益率(PER)は23倍に達したが、同業他社であるミシュランの市価のPERは16倍、韓国のクムホのPERは11倍にすぎない。
相次ぐ企業買収を見ていくと、われわれがより心配すべきリスクは中国企業の欧州資産買収時の買値が高すぎることだと思われる。なぜなら、彼らは欧州資産の中国消費者に対する魅力を高く評価しすぎているからだ。欧州製造業企業の生産効率を高く評価しすぎ、その労働力の融通のなさを過小評価しているために、買収後の企業利益成長を高く予測しすぎて、高すぎる企業買収対価を支払っている可能性がある。
クラブメッドの買収では、復星集団は世界に知れ渡っているフランスのバカンス・レジャーというライフスタイルを気に入り、そのライフスタイルの持つ良好なイメージとその他の資源を実際の経済的収益に転化させる能力が自社にあると信じて、中国人の観光消費が大きく増加し始めるタイミングで先手を打った。しかし、中国の国力増強と国際経済政治体系における地位の上昇につれて、中国国民の自信が大幅に高まり、また年間延べ1億人が海外に出かけて他の新興経済体、先進国・地域の実情を自分の目で見るようになったことで、大部分の人がそれまで抱いてきた西側諸国に対する一方的願望による美化と崇拝が大きく崩れた。こうした状況のもとで、彼らが欧米の観光サービス消費に際して国内よりずっと高い価格を支払い続けるだろうか。これには疑いの目を向けるべきである。
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