梅新育（商務部国際貿易経済合作研究院研究員） 

　ここ数年来、米・ＥＵなど先進経済体への中国の直接投資が盛んになり、特に欧州への投資が著しく増加している。

　年度別中国対外直接投資統計公報によると、２００９年末、先進国・地域への中国の対外直接投資残高が同年の対外直接投資残高総計に占める割合は７．４％に過ぎなかった。２０１０年、先進国・地域への中国の対外直接投資残高は対外投資残高総計の９ .４％に当たる２９６億９０００万ドルに達し、そのうち、ＥＵが１２５億ドル、オーストラリアが７８億７０００万ドル、米国が４８億７０００万ドル、カナダが２６億ドル、日本が１１億１０００万ドルだった。

　２０１３年末、中国の先進経済体への直接投資残高は投資残高総計の１４ .２％に当たる９３７億ドルに達し、そのうち、ＥＵが４００億９７００ドル、米国が２１９億ドル、オーストラリアが１７４億５０００万ドル、カナダが６１億９６００万ドル、ノルウェーが４７億７２００万ドル、日本が１８億９８００万ドルであった。

　２０１４年になると、ユーロ安やその他の要因によって、中国の先進経済体、特にＥＵへの投資が促進された。「２０１３年度中国対外直接投資統計公報」によると、２０１３年の中国の対ＥＵ直接投資額は４５億２３５０万ドルに達している。イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」は昨年の中国の対欧州投資額は１８０億ドルにのぼり、２０１３年のほぼ２倍に相当すると指摘した。イタリアだけでも、１年間の上海電力、国家電網、光明集団、中化集団の投資額は１００億ユーロ近くにのぼった。

　２０１５年に入ってからも中国の投資の勢いは弱まらず、象徴的な企業合併買収（ M&A）取引が次々と行われている。１月初め、復星集団がフランス・クラブメッド社を買収、３月下旬には中化集団が世界第五位の自動車タイヤメーカーであるイタリア・ピレリ社を買収し、欧州と世界の産業界で大きな反響を呼んだ。

　欧州中央銀行が実施する量的緩和政策と、ユーロ安、超低金利の背景の下で、中国とその他の国の対ＥＵ直接投資が伸びている。それは、一つにはユーロ安によって他の通貨建ての欧州資産価格が低くなったからであり、その一方で、ユーロの超低金利のため、欧州資産買収の資金調達コストが大幅に低減しているからでもある。