本誌特約評論員 安剛
米国の世界のリーダーという地位を支えているのは、世界の重要地域に広がる同盟関係のネットワークである。一般的に、米国には60の軍事同盟国があると考えられている。そのうち、欧州のNATO(北大西洋条約機構)加盟国、特にイギリスとドイツ、中東のサウジアラビア、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラク、アジア太平洋地域の日本、韓国、フィリピン、オーストラリアが最も重要なパートナーであり、支配戦略と集団的防衛を行う上での主要な支点でもある。
オバマ政権発足以来、米国の世界的影響力は全体的に低傾向にあり、同盟国の安全を保護する義務を効果的に果たせていないだけでなく、軍事配置の重心をアジア太平洋地域に移行する政策を取ったことで、欧州や中東の一部同盟国に自国が切り捨てられるのではないかという懸念を抱かせ、米国の同盟体系はあちこちでがたついているように見える。イスラエルとの関係は、対イラン政策の相違によって史上最も悪化している。ドイツとの関係は、スノーデンが暴露した米国の盗聴スキャンダルとウクライナ危機におけるロシア制裁に対する態度の違いによって揺らいでいる。イギリスとの「特殊な関係」は、イギリスが西側諸国で真っ先にアジアインフラ投資銀行(AIIB)創始メンバー国申請をしたことで疑問が呈されている。
2015年3月、イギリスのジョージ・オズボーン財務大臣が中国の主導するAIIBへの参加決定を表明した後、イタリア、ドイツ、オーストラリア、韓国などの国がそれに倣った。米国は中国がAIIBを発起したことを米国の指導する戦後世界秩序への挑戦と見なし、同盟国に対し参加しないよう説いて回っていた。オバマ政権は、イギリスが事前に米国と相談せずにAIIB参加を決め、中国側についたことを非難した。事実上、イギリスの決定は「米国と同盟関係を維持すると同時に、中国市場の巨大な潜在機会も逃したくない」という西側諸国に共通の心理状態を反映している。
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