暁岸(本誌特約評論員)
さしあたって、中国にとって南中国海問題が持つ二つの重要な意義は依然として合法的権益保護と安定維持である。中国は南中国海問題を利用して「ブルーウォーター戦略」を展開し西太平洋を支配しようとしているという見解は、客観性を欠いた無責任なものである。
南中国海紛争の直接当事者は中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、中国台湾であり、この他の国は直接当事者ではない。従って南中国海紛争は中国とASEAN(東南アジア諸国連合)との間の問題ではなく、まして中国と米国との間の問題でもない。しかし、南中国海情勢が安定しているか否かが国際社会の共通利益に関わっていることは否定できない。
南中国海問題において、多くの外部の誤解や疑念に直面してはいるものの、中国は対話と交渉による平和的問題解決の道を積極的に探る姿勢を終始堅持し、対抗と衝突の渦に陥ることを拒んできた。2014年7月、中国外交部の王毅部長は中国とASEANの外相会議の席上、南中国海問題解決のための「二重思考」を提起した。4カ月後、李克強総理は東アジア関連首脳会議に出席した際「二重思考」を確認し、ASEAN諸国の理解と支持を得られたと述べた。
ここでいう「二重思考」とは、①関連紛争は直接当事国が歴史的事実と国際法を尊重した上で、二国間ルートを通じて交渉・協議し平和的に解決すること、②南中国海の平和的安定を中国とASEAN諸国が共同で守ることである。この思考が提起されたことは、中国が南中国海紛争処理手法を実務面で調整し、合法的権益保護と安定維持の間のバランスを取ろうと努めており、南中国海問題に関するいかなる多国間交渉も完全に拒否する態度から、限定的多国間交渉にも一定の必然性があることを認め、限定的地域化で無限の国際化を防ぐという態度に転換したことを示している。
中国南海研究院院長の呉士存氏の考えでは、「二重思考」は直接当事国と非当事国それぞれの権利と義務を整理して明確化し、非紛争当事国が複雑な領有権紛争に巻き込まれどこにつくか選ばなければならない状況を効果的に回避することができ、さらには一部の国が南中国海紛争に乗じてASEANを「人質に取る」ことで中国とASEAN全体の関係に影響しようとする企みを牽制することもできる。
2015年に入り、情勢が緊張の度合いを増し複雑化したため、南中国海情勢が再び激化する可能性が排除できなくなった。フィリピンは2013年末、国際仲裁裁判所に対し中国との南中国海紛争の仲裁を一方的に申し立てた。中国政府は国際海洋法裁判所が一方的に管轄権を行使することに一貫して反対してきた。それは中国が堅持してきた直接当事国の交渉により紛争を解決するという主張と明らかに抵触するからである。ハーグ国際裁判所による仲裁裁判所は7月に開廷し、フィリピンが申し立てた案件に対し管轄権を有するかどうかをまず審理する。
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