中国は中所得国のわなに陥るだろうか。筆者は5~10年の間にこのような状況が現れることはまったくないと考える。まず、中国経済の成長率低下という主要要素から見てみると、このような低下は正常なものだ。いかなる国も経済の高成長を絶えず維持することはありえず、一定の段階に入ると、成長率は必ず低下していく。米国も、日本も、ドイツもそうであり、中国も同じだ。しかもより重要なのは、中国の経済成長率低下は、政府が自発的にコントロールしてきた結果だということである。経済成長の質とレベルを高めるため、中国は5年前から経済構造を調整し始め、昨年からはさらに全面的改革開放を推し進めている。改革の深化および成果の顕在化に従って、中国経済は適切な範囲内で安定した成長を維持すると見られ、成長率が低下することはないだろう。
第2に、中国の雇用情勢が悪化していくことはないだろう。中国政府は一貫して、あらゆる手を尽くして雇用を創出することに努めてきた。事実が証明するように、中国の雇用情勢は一貫して良好で、ここ数年、新規就職者数は年を追って増えているが、失業率は上昇しておらず、一貫してコントロールできる4%以内に収まっている。現在の経済発展の情勢と人口状況に対する予測に基づくと、今後5~10年の間に、中国の雇用情勢は今に比べてより良くなり、就職者の資質も今よりは高くなるはずだ。
第3に、人口の高齢化は一国が中所得国のわなに陥る主因ではない。中国は客観的に見て、先進国になる前に高齢化社会に入る。しかし各国を見ると、中所得国のわなに陥っている国が高齢化した国というわけではなく、高齢化した国はむしろその多くが富裕国である。そのため、急速な高齢化を中国が中所得国のわなに陥る理由と見なすには、科学的根拠がない。
第4に、中所得国のわなに陥っている国を深く分析してみると、「中所得国のわなに陥っている」原因は主にローエンド製造業のモデル転換が失敗したからだ。世界の工場だった中国は、これまでローテク製品や低付加価値製品を生産していた。「中国製造(メイド・イン・チャイナ)」から「中国創造(クリエイテッド・イン・チャイナ)」へとシフトすることは、中国が実施している戦略の一つである。現在の状況を見ると、このモデル転換は一定の効果を上げ、このモデル転換の深化に従って、新たな経済成長モデルが次第に構築されるだろう。
すべての中所得国は中所得国のわなに陥る危機に直面する。しかし、中国については、中国政府が経済のモデル転換とグレードアップのために払った努力に目を向けるべきだ。そこには、現在推進中の社会の公平を体現する所得分配改革、戸籍改革および経済発展を促すための金融、税収、産業構造などの改革が含まれる。これら改革の推進は、中国が「中所得国のわな」を首尾よく乗り越えることを助けてくれるに違いない。
「北京週報日本語版」2015年5月14日 |