自動車については、米国が日本に輸入米国車の安全基準を大幅に緩和するよう求める要求を取り下げた。共通認識に達するため、米国は積極的な態度に転じた。これまで、米国は一貫して日本に自動車の安全、排ガス規制区分、環境性能などに関する設定基準を緩和するよう求め、米国の基準を満たせば輸入できるようにすることを主張していたが、今回、米国はこの要求を取り下げた。 米日には、為替操作に関する条項をTPPに盛り込むかどうかについても意見に相違がある。一部の米国議会議員は、厳格な条項をTPPに盛り込んで、貿易相手が為替操作によって輸出競争力を獲得することを規制してほしいと考えているが、日本、オーストラリア、メキシコから反対されている。日本のTTP首席交渉官代理は3月の初めに、現在の交渉では為替操作に関する議論はまったく行われていないが、議題を交渉のテーブルにのせた場合それは交渉の決裂を意味する、との認識を示した。現時点では、為替操作の問題がTPPに盛り込まれる可能性はそう高くなく、米国内でもTPPはこの議題を交渉する場として適切ではないとして、反対する声が多い。
米日政府はさらなる協議を通じて両国の相違点を解消し、早急に合意に至ると見られる。残る焦点は、米国の輸入自動車部品関税撤廃の時期や、日本の牛・豚肉輸入急増時の緊急輸入制限(セーフガード)発動条件などに絞られた。
もちろん、TPP交渉は米日間の事項だけというわけではない。オーストラリア、ニュージーランドなど交渉経験が豊富な国にも、それぞれ注目を寄せる分野と主張がある。マレーシア、ベトナムなどの新興国も、国有企業や労働力、環境と知的財産権保護などに関する21世紀の新たな基準において先進国と多くの意見の相違がある。ハワイ協議でも、交渉参加国は知的財産権や国有企業改革などの議題をめぐって議論し、これらの分野における意見の相違を縮めようとした。
TPP交渉が直面するいま一つの大きな厄介事は、米国の貿易促進権限(TPA)付与の問題だ。オバマ大統領はまだ米議会から「貿易促進授権法」(TPA)の権限を付与されていない。民主・共和両党のTPAに関する議論は膠着状態にある。TPAを付与されて初めて、締結した貿易協定が米議会の承認手続きを経ずに直接投票を行うことが可能となり、プロセスを大いに短縮し不確定性を低下させることができる。TPAは交渉相手国が最終的に誠意を見せるように促す強力なツールである。現時点では、米経済が最近活況を呈し、貿易協定締結支持に賛成する共和党が参議院の決定権を握っているため、オバマがTPAを付与される可能性は数カ月前より高まったが、民主党の十分な賛成を得るのは依然として難しい。
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