二、世界はさらに不安定さを増した
2014年には、世界を騒がす出来事が3つ起きた。(1)ウクライナ危機が発生した。ウクライナ東部で戦火が燃え上がり、地政学的関係と国際秩序をかき乱した。ロシアと西側の関係は冷戦以来のどん底に陥り、ヨーロッパ大陸は再び地政的対立の最前線になり、従来型の安全保障リスクに直面し、「新冷戦」ひいては新たな「熱戦」の発生が懸念された。またロシアの復興が阻まれ、ロシアが主導する独立国家共同体(CIS)一体化が挫折した。さらに、国の主権と領土保全の尊重、内政不干渉など国際関係準則が脅かされ、国際関係準則における西側の「ダブルスタンダード 」が顕著になった。ウクライナ危機は、世界でアジア・太平洋、中東、ヨーロッパの三大地政学的対立が並行して進行し、相互に影響を与える局面が形成され、国際戦略構造の深刻な変化をもたらしたことも意味している。
(2)「イスラム国」が全世界で実力が最も強く、影響力が最も大きいテロ組織になり、波及効果も生じた。イスラム国はシリアとイラクで台頭し、西アジアと北アフリカの政治構造を打ち破り、米国の対イラク戦争と「民主改造」の成果が水泡に帰すことを狙っており、イスラエルを滅ぼし、イランの地政戦略利益と中東におけるロシアの「勢力範囲」に挑もうとしている。また新疆を占領するという誓いをたて、中国の主権と国家の統一にとって潜在的な脅威になっている。全世界の過激派とテロリストを「聖戦」に参加するよう勧誘し、テロリズムの脅威を世界各地に拡散した。各テロ組織はイスラム国の戦闘経験を参考にして、アフガニスタンのタリバン、パキスタンのタリバン、「ボコ・ハラム」、リビア原理主義武装組織が新たな攻撃をかけ、インドネシア「イスラム国」が東南アジア「イスラム国」の成立を宣言し、アジアとアフリカの二大陸で広範囲な激動をもたらした。米国は22カ国と連携して「イスラム国」を攻撃したが、その拡張を抑制できていない。
(3)エボラ出血熱が大規模に流行し、死亡者が5000人を上回り、世界の公衆衛生に警報を発した。
このほか、領土、海洋紛争が頻発し、サイバースペースでの戦いが激化し、気候変動の試練が厳しくなり、サイバーテロリズム、航空安全、食糧安全などの問題が顕著化し、西側の分裂政治が台頭し、ポピュリズムが高まり、アジア・アフリカ・中南米で多くの国の政局が激動し、「色の革命」の新しいヴァージョンが現れ、地域の争点が時として激化し、北極争奪が激しくなった。これらすべてが世界を掻き乱した。
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