二､衆議院解散の理由 

安倍首相が衆議院を解散した理由は、「アベノミクス」と消費税率１０％先送りという「重大決断」について国民に信を問うというものだ。しかし実際には、これは政治家が自身の真の目的を覆い隠すための口実、民衆を欺くための口実にすぎず、このような理由は日本の有権者にとっては筋が通らないもので、まったく衆議院解散の理由にはならない。「アベノミクス」推進にしろ、２０１７年１０月まで消費税１０％先送りにしろ、そのために衆議院解散で国民に信を問う必要があるだろうか｡現在、衆議院は完全に自民党が掌握している。２０１２年１２月の総選挙で安倍氏率いる自民党が大勝し、全４８０議席のうち２９４席を占め、単独過半数となった。安倍首相はどんな政策でも衆議院を通過させることができ、衆議院解散は余計だ。そのため党内外からも「必要ない、税金の無駄遣い、経済回復計画の実行に影響する」など多くの疑問の声が上がった｡自民党内の大物で安倍首相の強力なライバルであり、「地方創生相」のポストにある石破茂氏ですら、衆議院解散でいったい何について国民に信を問うのかを明確にしなければならない、と公の場で疑問を呈していた｡安倍首相は上述のような理由でうわべを取り繕うことしかできず、内心の本当の考えを口にする勇気はない｡心のうちを包み隠さず打ち明ければ、日本国民の安倍首相に対するイメージは大きく低下し、日本の民衆はまた安倍首相は責任感のない私利私欲をむさぼる政治家だと判断するだろう｡２００７年の首相辞任の際、日本の民衆は安倍首相に大きく失望したため、安倍首相は内心の奥深くにある本当の考えを深く覆い隠しているに違いない｡そしてもっともらしい理由を探してきて日本の有権者をごまかしている。選挙に勝ちさえすれば、最後には、誰も理由について深く追究することはない｡ 

三､衆議院解散の目的 

衆議院議員の任期的に見て、安倍首相がこのタイミングを選んで衆議院を解散し任期満了前に総選挙に踏み切ったのは実に巧みだった｡解散前の衆議院議員の任期は２０１２年１２月～２０１６年１２月。任期満了前に衆議院選挙を行い、安倍首相と自民党が勝利すれば、自民党は衆議院における多数派の地位を２０１８年１２月まで維持することができる｡途中で不測の事態が起きなければ、安倍内閣と自民党政権はおのずと２０１８年１２月まで続くことになる。これは、２０１６年１２月に任期満了による衆議院選挙を行った場合に安倍首相と自民党が直面したであろう敗北、ひいては内閣総辞職という状況を変え、政権担当期間をさらに２年引き延ばせることと等しい。今回の解散総選挙は、安倍首相と自民党が選挙政治を利用し、安倍氏自身と党だけの利益をはかるために、周到な計画と深遠な見通しに基づいて取った行動だったのだ。 

（１）安倍政権は現在も４０～５０％の支持率を維持している。今回の解散総選挙に当たって、他の政党は選挙準備をしていなかった上に、安倍首相と対抗できる候補もいないため、安倍首相と自民党が勝利する公算は非常に高い｡つまり、自民党のみが強大で野党がばらばらの「一強多弱」政治構造が今後も続くということだ｡任期満了前の総選挙実施で、自民党は議席を多少失う可能性はあるものの、それでも多数の議席をキープすることは一応可能だろう。そうなれば安倍首相の勝利であり、安倍政権長期化が保証される｡日本の反対党派は烏合の衆で、民主党など野党は日本の民衆に対してあまり威信がない｡同時に、野党の中にも民衆の信任を得られる政治家がいない｡このような状況で、安倍首相一人、自民党一党だけが強い状況が維持され、野党は依然として議会政治における集団少数になるだろう｡